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冷たい大理石の敷き詰められた元老院のエントランスが俄かに騒がしくなったのは、丁度、黄金騎士冴島鋼牙が、魔戒法師の布道レオと仕事終わりに雑談をしている最中の事だった。 「何だ?」 普段、耳が痛くなる程の静寂を湛えた白亜の宮殿において、こんな事は稀である。 しかし、前例が無いでもない。 これを知るだけに、彼等は眉を顰めた。その後に起こった大きな危機を、生々しく記憶していたからだ。 やがて、目には見えない青のざわめきを先頭にして、数人の法師に連行されて来た人物に、二人はぎょっと目を剥いた。 何しろ、頭のてっぺんから足の先まで、元の色が分からなくなるほどに血塗れだったのだ。乾きかかった錆色が、一歩毎にぱりぱりと音を立ててはがれ落ちる。 次に目が行くのは、相貌だ。有体に表現して、酷く端正な面立ちをしている。 間違いなく男の顔なのだが、同性ですらぐっと何かを飲み込んでしまうような、強烈で妖しい色香を放っていた。 しかし、鋼牙とレオの目を引いたのは、造作ではなく表情の方だった。 笑っている。とても無邪気に、にこにこと。 それは、赤子の理屈のない笑みに、とても近しい物だった。 けれど、時間をかけて一つ一つ目元や唇に刻み込まれた物のようでもある。 何とも奇妙で、だが悪意や闇をまるで感じさせない男だった。 呆気に取られてからようやく、その手足と首に太く冷たい枷がはまっている事に気付く。 拘束の為なのか、との予想は即座に外れ、それは錆び付いて古臭かった。 一体、何者なのか、皆目見当が付かない。 見る者を混乱させる有様にぽかんとしていると、男を取り囲んだ法師の一人が棒立ちの二人に気付いて駆け寄って来た。 「これは鋼牙殿、レオ殿」 「あの、これは・・・どうしたんですか?」 我ながら要領を得ない質問だな、とは思ったが、他にどう問いかければ良いのかレオ自身にも分からない。 彼等の困惑を察した法師は肩をすくめ、それから鹿爪らしい面を作った。 「あの男は、村を丸ごと一つ、皆殺しにしたんです」 「「は?」」 二人は同時に、何とも気の利かない声を発していた。 多分に「まさか、嘘だろう」という感慨がこもっている。 「本当です。山奥の辺鄙な村で、全員死亡しました。男も女も、老人も子供も区別無く。現場は血の海でした」 光景を思い出したのか、法師の頬がさっと青ざめる。 「それなら、誰かが現場を目撃した訳ではないんだろう?」 鋼牙は、そしてレオも、どうしても信じられなかった。 否、信じたくなかった、と表した方が正しい。 何しろ、彼の人物は、二人のこれまでの常識に照らし合わせるのならば、全く悪意の無い風体だったからだ。 犯罪、特に凶悪な行いに及ぶ人間という物は、概して、独特の空気をまとっているものである。 これを彼等は『邪気』と呼称していた。 邪気が一切無い人間、というのも存外少ない中、男の纏う空気は、清浄と呼んで差し支えない程に澄み切っていたのだ。 もしも法師が本当の事を言っているのだとしたら、己の中で基準としている根幹から崩壊してしまう。 あり得ない、と信じていた事柄があり得るようになってしまうのは、とても不吉で不安だった。 だが無情にも、法師は頭を振る。仕草は、同業柄二人の心情をよく理解している、と物語っていた。 「調べてみましたが、あの血は全て返り血です。躯の中心で、ぶちまけたバラバラの死体で遊んでいる所を発見したのです」 少し困ったように視線を外し、法師は言い淀む。 「・・・発狂したのか?」 「いいえ、それもどうやら違うようで・・・」 何とも歯切れが悪い。まだ何も分かっていない、というのが正直な所なのかもしれない。 「そもそも、あれは何者なんだ?法師か?騎士か?」 ゆったりとした、随分と粗末な衣を身に付けている。 血糊を度外視すれば、砂漠の民のような印象で、騎士とも法師とも明言出来ない。 「分かりません。酷く古ぼけた魔戒剣を持ってはいたのですが、長い事使った形跡がありませんでしたし、あの調子なので、本人の持ち物かどうか・・・」 「?じゃあ、村人はどうしたんだ?」 血の海、と聞いて、てっきり斬り殺したんだろうと思い込んでいた。 「素手です」 「素手っ!?」 勿論、彼等とて、その気になれば空手でも人が殺せる。だが、この方法では、それだけの血生臭い結果にはならない。 「物凄い力で、肉をむしり取って殺したんです。急所を一撃でやられた者は幸運な方で、中途半端にやられた者は、随分と長い時間苦しんだようでした」 あまりにも凄惨な手口に、さしもの鋼牙とレオも絶句する。 いくら急所だったとしても、そのやり方で即死は難しいだろう。彼等が駆けつけた時、まだ虫の息の者もあったのかもしれない。 もう一度、男を見やる。 ゆったりと歩く足取りには、何の抵抗も見られない。 「その割に、随分と大人しいな」 相変わらず子供のような笑みを浮かべ、明らかに自分の事を話している筈の三人の方を、気にする素振りさえ見せない。 極度の興奮状態であるとか、虚勢の勝ち誇った笑みだとか、あるいは悔恨や自失の虚脱など、微塵も見えなかった。 それだけの真似をしでかした人間が見せる、一切の痕跡が欠片も見つけられないのだ。 「何もかも、本当に不明なのです。捕縛の際に剣を向けても魔導筆を向けても無反応で、始終、ああやって、その、微笑むばかりで・・・捕まえる時もあっさりしたもので、こちらが拍子抜けしたくらいです」 一瞬だけ、男の目と合う。 寸の間のぞき込んだその奥は、酷く澄んだ水底のようで、やはり何一つ、闇の気配を見出す事が出来ない。 「白痴か?」 鋼牙の疑問に答えなど無く、男はしずしずと連れられて行く。 しかしこれは、事件のほんの始まりに過ぎなかった。 と、いう感じで、基本的に鋼カオで、鋼牙とレオが真面目に仕事をしている話です。 全72ページ、A5版。
