カサネタココロ
Physical (worldwide shipping)
Purchase via Buyee
- 600 JPY
Physical (ship to Japan)
- 600 JPY
モゼクル/全年齢/P66/¥600 2022.10.16より順次発送 ※天候等によって数日ずれることがあります (本文より) 「何もないところで足を滑らせて、そのまま派手に落ちたと聞いたが?」 「……ええ、そうです。ふらついて」 誰にぶつかられたわけでもない。 荷物で前が見えなかったわけでもない。 彼はただ普通に階段を降りようとしていただけだ。 なるほど、クルーウェルの主張は、泡を食って呼びに来た生徒の証言とも一致している。 ならばこれはただの事故だ。 疑う余地もない。 そのはずなのだが、項のあたりにちりちりとした違和感がある。 NRCで十年以上も生徒達を導いてきたトレインの教師としての経験が、『それ』を疑えと告げている。 眇められたトレインの視線に、誰にでもあることでしょう、と言うようにクルーウェルは肩をすくめた。 もう話すことはないと言いたげに、ふらりと視線が離れていく。 当時の状況について、どれほど問い詰めたところで、クルーウェルはもうこれ以上何も言わないだろう。 ほとんどの教員が彼と向き合うのを諦めているのも、クルーウェルのこうした態度が原因の一端なのだ。 『彼を力ずくで黙らせるか、それができないのなら、彼の存在自体を無視するべきですよ。彼とはまともな話し合いが望めないのだから』 多くの教師が言うように、彼との対話はほとんどの場合徒労に終わる。 それでもトレインは、彼を見捨ててしまいたくはなかった。 ほとんど全教科でトップクラスに優秀な成績を修めていてさえ、クルーウェルは好感の持てる生徒だとは言い難い。 それでもだ。 (一部抜粋)
查看更多