A5サイズ・本文40ページ 現代ファンタジー「鱗粉注意報」 口から無数の蝶を吐き出して死ぬ、という奇病に怯えるようになった世界。犠牲者の筋肉や内臓を食い尽くしたかのように、蛹のような人の殻だけを残し、煌く鱗粉を撒き散らして飛び去って行く蝶の群れ。 降り注ぐ鱗粉に人は怯え――やがて慣れた。交通事故や病気や老衰の他に、死因がひとつ増えただけ。鱗粉予報を毎朝見ながら、誰もが当たり前に生活している。そんな世界で蝶に憧れる彼女の話。 ホラー「剥がれ落ちて生れ落ちる」 子供の頃、チョウの交尾を見たんだ。初めて見たから最後まで見ちゃってさ。終わった後、一匹が俺の方に飛んできてさ――何か、つい、捕まえて蜘蛛の巣に掛けちゃったんだよね。 バーの片隅で、ナンパ相手にした昔話。それが恐怖と激痛の引き金となってしまう。子供の頃に弄んだ命。堕胎された赤ん坊。生まれなかった命が生まれようとする時、求められるのは他の命の犠牲だった。 「小説家になろう」に掲載していた短編二作品を加筆修正の上、収録しました。いずれも「蝶を吐く」をテーマにした作品です。