龍神様の花嫁
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【A5/36P/400円】 和泉三月✕小鳥遊紡(龍神パロ) ――私は、龍神様と契った身。選択肢を頂かなくても、生きる道は一つ―― ある村では百二十年に一度、祀っている龍神へ花嫁を差し出す因習があった。 この年はちょうど龍神へ花嫁を差し出す年となっていた。 話し合いの結果、紡が花嫁として龍神に嫁ぐことになった。 婚儀後。龍神の本体があるとされている祠がある洞窟の、輿の中で龍神の使いを待つ紡の元へ、旅人がさまよい込んできて……
序章
百二十年に一度のサイクルで、ある村では祀っている龍神様へ【嫁入り】という名の贄を差し出す因習が残っていた。 今年は、その贄を差し出さなければならない年になっていた。 長や村の頭たちが話し合った結果、小鳥遊家の娘が選ばれた。 快活明瞭でよく働くという評判だけではなく、容姿もそこそこ良い。さらに、小鳥遊家の家系はもともと血筋が良いと言われている。これならば、龍神も文句は言わないだろう、と。 龍神への嫁入りを通達された紡はただ、分かりましたと答えただけ。 長たちは紡を褒めちぎるが、これは建前で。本音は、恐らく違うだろう。 ありがとうございます、光栄です、と紡も笑顔を顔に貼り付けながら応対した。 龍神への嫁入りは一週間後。それまでに嫁入りのための必要な準備をしろと命じられた。 必要な準備と言われても何を準備したら良いのだろうか。婚姻に関することを知っていてなおかつ信頼できる人物が、紡の身近にはいないのだ。 少し離れた距離の家にいる姐さん方に聞くべきだろうか。しかし、彼女らはいい加減な言葉を述べるだけで終わりそうだな、と紡は思った。 さて、どうすれば良いだろうと思案している時だった。ドンドンと扉を叩く音が響く。 開けた先にいたのは、 「……思ったより元気じゃん」 「大和さん……」 村の長の息子である、大和が立っていた。 入るぞ、とズカズカと家の中に入る大和は大きな箱を持っていた。 「大和さん、それは……?」 「嫁入り道具。お前にやるよ。俺のところは女が産まれなかったから」 「そんな、でもこれは……大和さんのお母様の」 「いいって、いいって。気にしなさんな。それに、他の家のやつらに聞いたってろくな答えしか貰えないの、お前さんわかってるんだろ?」 大和の言葉に紡は何も言わなかった。彼女の態度を肯定と受け取ったのだろう。素直に受け取りなさい、と紡に言った。 「流石に村をあげての大祭になる。お前に変なことをする輩なんていないさ」 「……本当に、そうでしょうか?」 龍神への嫁入りは村にとっては慶事だ。神に供物を捧げることで、しばらくの期間はこの村に安泰が約束されるものだから。 さらに、龍神に嫁入りしたものは彼の元で容姿が老いないまじないを貰えるという噂がある。 だから、龍神の嫁になりたいという子はこの村で少なからずいる。
