One and only
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コピ本 A5 12P 【サンプル】 4つにたたまれた紙きれをもらった日向はまじまじと影山の顔を見つめてしまった。「なに、これ?」「家であけろ」それだけ云うとさっさと教室に入ってしまう。日向は首を傾げながら紙切れを開けようとして、さっき云われた言葉を思い出した。家であけろ。よくわからないけど、重要なことではなさそうだ。そう結論付けると紙切れをズボンのポケットに無造作に入れ自分の教室へ戻っていった。今日は3年間の想い出の詰まった学び舎の卒業式だ。 学び舎で過ごす最後の1日。とはいえ、日向にとって学び舎は教室ではなく第2体育館であった。最後の最後、後輩たちと試合をして、送別会をして、家に帰って制服を脱ごうとしたらかさりと音がして、日向は今日渡された紙のことを思い出した。家であけろ、ということはもう開けてもいいということだ。何が書いてあるのだろうか?罵詈雑言だけは堪忍してほしい。と思いながら少々くたびれてしまったノートの切れ端のような紙を開けると、そこにはたった一言。 『One and only』 と書かれてあり、日向が首を傾げる。「英語・・・?」影山が?だけど、単語自体は簡単なもので。だけど意味が分からない。考えることを拒否すると日向は携帯を出してメールを打ち始めた。『研磨、One and onlyの意味知ってる?』頭のいい奴に全てを投げ出していいのかどうか。まぁ、どうしたってわからないんだからいいだろ、と日向は単純に考えていた。と、ぴこんとメール着信の音が聞こえる。弧爪からの返信だ。メールを開けて日向は「はぁぁぁぁぁ~~!」と思わず叫び声をあげてしまう。そこには『ラブレター?』と一言だけ。なんで影山からもらったメッセージがラブレターになるんだ!大慌てで返信を書く。『違う!影山からもらった紙に書いてあった!!」と再びぴこんと携帯が鳴る。『唯一無二』簡単に帰ってきた単語に日向は胸をなでおろした。研磨は何を間違ったんだろう?しかし、この言葉は純粋に嬉しい。唯一無二の相棒。日向は影山のことをそう思っていた。それは高校を卒業して違う大学に行くことになっても変わらないということだ。影山も日向と同じ気持ちだということだ。日向が弧爪に『サンキュ』とメールを打つと、影山にコールをした。