Summer School
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全14ページのコピー本です。 本文が短くて、サンプルをあげるほどでもないので、抜粋を載せておきます。 秀零(1512)が、ロンドンのサマースクール(世界各国から少年少女が集められて、夏休みを過ごすキャンプみたいなもの)で出会うお話。純愛で、まさに「少年愛」って感じ。勝手に零くんの保護者にベルモットが設定されています。 以下抜粋↓ ◆ 「何を読んでる?」 暑いから、と解放されたプールには僕と秀一の他には誰もいなかった。というのも、秀一がみんなを追い払ったからだ。 オクスフォードの学生寮に放り込まれたのはつい2週間前。英語がわからなくて人目のつかない花壇のそばで泣いていた僕は秀一に見つかって、それからというもの僕は秀一に何から何まで教えてもらっていた。 スクールに来た初日、友達が出来るかとワクワクして来てみたら英語を知らなかった僕はすぐに皆から弾かれた。それでも周りを見ればすぐにわかった。数百人いるサマースクールの中で、みんな自分の居場所を作るのだと。広い学内で自由に遊ぶのだ、一人では寂しすぎる。女の子ほどではなくても、男の子もある程度は気の合うやつを見つけて一緒に行動していた。そして、秀一はこのサマースクールにいる子供達の中でボスだということも。 「Voltaire、さっき図書館で見つけたんだ。」 「ヴォルテールか、Each player must accept the cards life deals him or her; but once they are in hand, he or she alone must decide how to play the cards in order to win the game.」 「何人も、配られたカードを受け入れなければならない。でも、一度カードが手に入ってしまえば、勝つためにどうプレイするかは本人だけに委ねられる…だよね?」 「ああ…開けてみたカードが最悪だったら、君はどうする?」 「うーん…僕だったら…そのままプレイするよ」 「負けるとわかっていても?」 「負けるだなんてわからないよ、シュウ」 僕はそう言うと、白いチェアで寝転がる秀一に閉じた本を押し付けた。サングラス越しに秀一が僕を訝しむようにみたが、気にせずにプールへと飛び込む。バシャ、っと大きな水しぶきが立ち、虹が見えた。 「レイ!」 「The cards life deals. シュウはどのカードが最悪か、わかるの?僕はわからないよ。例えば、今この瞬間だって、5年後には今日のことを楽しかった記憶として捉えるかもしれないけれど、20年後には今日のことを忌々しく思うかもしれない。」 サングラスを外したシュウは、僕に続きを促した。 「配られた手札が良いか、悪いかなんて、場に出してみないとわからないよ。それに、認識はいつだって変えられる。どんなプレイをしようが、その価値を最後に決めるのは僕自身だ。」 「レイは、最善のプレイが出来ると思うか?」 「シュウは何が不安なの?」 畳み掛けるように僕は秀一に聞いた。目の前の男は、何を心配しているんだろう。頭も良くて、面倒見もいい。見目麗しくて、運動も出来る…そこまで考えて僕はハッとした。秀一は自分に配られたカードを心配してるのか? 「シュウは、今の自分が不安なのか?」 「…わかってるよ、これは一種のモラトリアムだ。」 「くく、シュウもまだ15才なんだもんな」 珍しく弱気な秀一を笑ったら、秀一は拗ねてチッと舌打ちをすると、プールに飛び込んできた。 僕を狙って飛び込んできたせいで、秀一は僕を水中に連れて行く。 水深3メートルはあるプールの底で、僕は秀一を見た。 いつもは癖っ毛の黒い髪が、水になびいていた。鋭い瞳は、水を通した太陽の陽かりでエメラルドに輝いている。 綺麗な男だ。僕はそう思った。 思わずその唇に、キスをする。 エメラルドが見開かれたのを見て、僕は底を蹴って水上へと逃げた。