道教の古来より、人の病や悪感情は体内の虫が悪さをするからだという考えがある 　風邪を引くのも苛立ちが収まらないのも腹を下すのも訳もなく哀しくなるのも 　あなたの夢見が悪いのも 　睡眠不足による疲れからか、日中でも奇妙な幻覚を見始めるようになる 　最初は視界の隅に現れては消えるだけだった手のひらほどの小男は、ある日を境に自分以外には聞こえない声で話しかけてくるようになった 　曰く自分の名は「太郎」であり、次の庚申の日に死ぬ定めにある、あなたを助けに来たのだという。 　そして死ぬ定めを回避するには、あなたが抱えている悩みを解決しなければならないのだと。