図案解説

✦彗/彗星雷雨 自然って物凄くて、牙を剥くという表現をする程に酷い災害を巻き起こしたりする。空と海が荒れるとこの世の終わりかと思う。彗は空のエキスパートで雷と雨の事をよく知っている。恵みの雨は神の涙だというが、嵐は神の怒りとも言う。穏やかな空は青々としているが、それも天国に近づくにつれ黒色に変わる。稲妻の多い年は米が豊作だという。空で閃光のように瞬いて走るものが3つある、雷・星・雨。どれも美しく、祭のようでいて嬉しく恐ろしい。 ✦藍/月光大天蠶 神仏が人の姿になることを化生と言いますが、蝶や蛾は湿生と呼ばれる生き物に属しこれらは湿気の中から生まれてくるとされています。熱帯が生物の楽園だというのは皆さんも想像に易い事でしょう。ヤママユガ系の蛾を手に持ってみた事のある人なら、たっぷりとした重み、しっとりとした質感、おおらかで美しい羽、そして顔の愛嬌や全体のフォルムの美しさに息を呑んだことがあるはず。月光菩薩とは裏腹に、月の神は美しく気まぐれで意地悪で気が強いらしいですよ。藍は美しい夢を作る人です。 ✦楓/錫杖水仙 千手観音が持つ数多の仏具の中で錫杖と呼ばれる杖は言うなれば慈愛を象徴する楽器で、シャラシャラ鳴り、煩悩を取り払うというもの。人を護る為のもの。楓は今のところ冴えない怠惰の日々を送っていますが絶対音感の持ち主で楽器が出来ます。未来では明らかになる能力の為にまもなく寺院に身を入れるという設定があり、自己愛や孤独と決闘して煩悩を解脱し、悟りを知り聡の教えを守ります。水仙、美しい神の名の花、甘く香る陶酔の花。 ✦枷葉/烟花燕子 杜若の黒々と鋭く伸びる美しさは、夏の予感を真っ先に感じさせる憂鬱を帯びています。花は紫煙を巻き上げながら熱帯夜を呼び夕立を誘い、燕の尾の様に長く蝶の如き軽やかな境地で咲き乱れ時に淫らな程です。菖蒲の根は世界で一番高級な香料として名を馳せておりその香りは実に清らかで、粉っぽく仏間の様に涼しく甘い香りがします。泥から伸びる花で蓮の前に満開になるのか杜若なんですよ。それがまた美しい。パープルヘイズではありません。 ✦聡/宝戟蓮花 千手観音が持つ武器が宝戟、俗に言うトライデントで、何を射止め貫くのか追い払うのかは持つ者のみが知る所。聖なる者が刃先を向けるものとは。仏教の蓮モチーフは随分使い古された古典様式ですが、夏の蓮池で揺れる満開の蓮をじっくり見つめて寺院の焚き上げや経の響き、線香や清水の香りを聴いているとえも言われぬ独特の感覚に襲われ、やっぱり涅槃や桃源郷を彷彿させ現世の景色とは思えぬのです。 ✦鵠/慈氏月下香 チュベローズの香りは欲望と愛の香りで、熱帯の夜の花。スラっと白く伸びる花弁からは葡萄の様な濃密な香りが。この花に包まれた神様がいるとしたら相当の好色でしょう。でも、この花自体がもし人なのだとしたらきっと彼の様な性格じゃ無いかと思うんですよ。鵠は数多の顔を持つ複雑な青年で凡そ神聖さとは程遠い俗者ですが、彼が受けている雑念や苦悩の影にほんのり弥勒菩薩の雰囲気を感じる事があります。Yumeji.で一番瞑想に詳しいのが鵠です。 ✦赤穂/波浪芍薬 花が咲く事を笑うと表現したりするけど、芍薬が笑ったらその美しさは仏も見過ごすまい。笑みを売る仕事をする者は娼婦で、赤穂が愛したキリルは娼館の主人で高級娼婦だった訳です。死ぬ筈の命を救って貰った・救ったという関係はこの世の因果を乱し秩序を失い、輪廻転生の法則を破り2人は離ればなれのまま。あらゆる物を乱し掻き混ぜるさまは荒れ狂う海と鯨の如く、怒りの如く、手が付けられないものです。