【PDF版】泊昌史『風化術──サンバ・デ・山元』
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稀代の一人共産主義者による異色の復興論!復興について考え、活動するすべての人に。
本書について
「いまこそ、風化を目標にかかげるときだ。忘れることがよいことをもたらすのなら果敢にものごとを忘れよう。」(本書「はじめに」) 本書が掲げる「風化」とは、所詮は資本主義的な時間的想像力の枠内でのアーカイヴ化や、制度化された伝承事業などが抵抗を試みるような記憶の風化のことではない。徹底的に想起し、使い倒し、自他の区別がほとんど消失する一点にまで到達してはじめて可能になる、混沌として清々しい風化である。 自覚なき疚しさに駆動されたボランティア精神と、その周辺の諸事業が『風化術』の主な批判検討対象である。そんな精神など風化させてしまおうではないか。本書は、地震と津波で甚大な被害を受けた宮城県亘理郡山元町での、数年にわたる著者のまちおこし従事経験の回顧という体裁のあまりにも生々しいドキュメントであり、迷宮的な自己批判であり、俳優修業を積む土地への恋文であり、「当事者でない者の被災」を取り扱った復興批評である。 これから何らかのボランティアやまちおこし事業に従事せんと志すあなた、あるいはすでに従事したことにより言語化しえぬ悪夢に苛まれ続けるあなたに読まれるためにこそ、本書は書かれたのである。困惑をやりすごして本書を読み終えたときには、すでに、著者さえその実態の掴めない風化術のなんたるかがはっきりと体感されているだろう。
目次
・はじめに ・常磐線のぼり山下行き ・あたたかい監視のネットワーク ・ビルドゥングス・ロマン ・ボランティアの毒性 ・わたしたちも被災した ・忘れよう
書籍情報
全52頁(+表紙見開き画像) 2020年10月発行 著者 泊昌史(とまりまさし) 一九九〇年横浜生まれ、香港そだち。 大学院卒業後、二〇一六年に山元町に移住し、約三年間、数々の職場で町おこしに従事する。現在、横浜市在住。