ボクとキミとセカイのカンケイ
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A5 52P 500円 スペースはヘタリアですが、ロックマンXのゼロックス本がでます。通販は年明けからになる予定です。 昔だした本のリメイクで、短編が6本はいってます。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ おやすみなさい、また明日 始めにわかったのは、白い天井。 最後の戦いでボロボロになってしまったアーマーも、今は身につけていなくて、代わりになにか違うものを着せられている。 どれほどこうしていたのかはわからないけれど、とりあえず意識を取り戻したことを、誰かに伝えないといけない。 起きあがろうとして――体にあまり力がはいらないことに気がついた。 これではコールボタンすら押せない。 しかたなくベッドの上でぼんやりしていると、可愛らしい声で名前を呼ばれた。 ゆるゆると視線を向ければ、部下の女の子が呆然とした顔でこちらを見つめて、立ち尽くしている。 「オリー……ブ……」 名前を呼べば、はっとしたように駆け寄ってきて、顔をのぞき込まれる。 「た、たい、ちょ……目が、覚め……」 「……うん……」 「う……うわあぁぁぁぁんっ、よかったぁ、良かったですぅぅ」 途端にぼろぼろと大粒の涙を流して、彼女が泣き出してしまった。 ああ、困ったなぁ。涙を拭ってあげたいけど、上手に動かない。 「たい、隊長、シグマを倒して、戻って来たんですけど、ぼろぼろでっ、い、意識もなくてっ……ずっと眠ってたんですよ」 ああ……そうか、そうだ。 シグマとの二回目の戦い…… それでボロボロになって……でもゼロ先輩がおれを負ぶって…… 「せ……先輩……そうだ、先輩は、ゼロ先輩、は」 あのあとどうしたんだろう。彼もまた無事なのだろうか。 ハンカチで涙を拭いながら、オリーブはベッドを操作して、おれを起こしてくれた。 「あの金髪のかたですよね? ご無事ですよ。さっきまで隊長のそばにいらっしゃったんですが、ケイン博士に呼び出されて……って、ああっ。 そうでしたっ。コールコール!」 みんなに隊長が起きたのをお知らせしないとですね、と泣きながら笑う彼女の言葉に、夢ではなかったんだと安堵する。 一緒に戦って……少ししか話ができなかったけど…… 良かった。夢じゃない。 ゼロ先輩は、ココにいる。 生きて、いる。 その事実に、体中があたたかくなっていく。 やっと涙が引っ込んだらしいオリーブが、トントントンと忙しなくノックに気がついて扉を開ければ、十七部隊の面々がソコにいた。 それぞれが泣き出しそうな……嬉しそうな、複雑そうな顔をしていて、本当に心配をかけてしまったのだと反省してしまう。 わいわいとそのまま会話をしていると、昔なじみの部下がくしゃくしゃと頭を撫でてくれた後に、思い出したように口を開く。 「そういえば、あいつがゼロ?」 「うん。そうだよ」 彼には前々から先輩の話をしていたからか、見た瞬間にわかったんだろう。 もしかしたら、どこかでデータを見ていたのかもしれない。 「はー……いろいろと言いたいコトはあんねんけど、おまえの大事な友達に免じて、言わんといてやるわ」 「あはは……ごめんね」 「金髪にーちゃんがおまえ抱えて来たときに、あ、これがゼロかーって思ったけど……良かったなぁ。やっと会えたんやなぁ」 呆れたような眼差しが、優しいものへと変わる。 「うん……」 ずっとずっと、会いたかった。 世界で一番大切な先輩。 どんなときも励ましてくれて、時に手助けしてくれて。 自慢の後輩だと言ってくれて。 終わったらちゃんとお礼を言ったり謝ったりしたかったのに、先輩だけ戻らなくて。 それなのに、日々はどんどん過ぎていく。 おれのココロだけが置き去りのまま、いろんなコトが決まっていって。 十七部隊の隊長を引き継ぐとなった時も、いろんなコトがあって。 隣にいる彼にも、迷惑をかけてしまった。 けれど。 『おまえが出した答えや。なんも言わん』 そう言って、バスターを封印したおれについてきてくれた。 何度も助けてくれた。 そんな彼に、ゼロ先輩のコトをずっと話していたと思う。まるでノロケやなって言われたときには、ちょっと照れてしまったけど。 おれが先輩を取り戻そうと必死だったときも、心配はしていたけれど、手を貸してくれていた。 ほかのひと達だってそうだ。 みんながいてくれて、力を貸してくれたから、先輩を取り戻すことができた。 それは……なんていう奇跡なんだろう。 「あ」 オリーブが訪問者に気がついて、「お見えですよ」と教えてくれた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ きゃんでぃ 舞い踊る炎が空を焦がし。 あがる黒煙が青空を隠し。 動くモノはひとつだけになって。 辺りを見渡して全てを屠ったのを確認して、彼は漸く光り輝く剣を背に戻した。 「うわっ」 ホーネックが血塗れのゼロを見つけたときの第一声がソレだった。 通常であれば、眩い太陽のように煌めいているその髪が、今はどす黒いオイルで真っ黒に染まり、固まりかけている。 忍び部隊という部隊名なのに、隠密で動く気などさらさらないだろう、という突っ込みをくらいそうな、ちっとも自重していない真っ赤なカラーリングのボディ。 それも同様に黒ずみ、ぼたぼたと固まりかけているオイルがしたたり落ちていた。 一瞬、どこか損傷でもしたのかと慌てて駆け寄るが、彼がこの程度で怪我なんてするわけもないと、すぐに思い直した。 その証拠に、瓦礫に腰掛けていたゼロはホーネックに気がつくと、苦笑を浮かべて立ち上がり、軽く手を挙げた。 「遅かったな」 「こっちもわりと大変だったんですよ。っていうか隊長、また無茶やらかしましたね」 浴びた返り血の量をみれば、概ねどの程度のイレギュラーと渡り合ったのか想像もつく。 「そうでもない。ただのザコだった」 「ザコでも量が多すぎたんですよ。大丈夫だとは思いましたけど、数の暴力ってコトもありますからね。 万が一ってコトもあるということを」 「あー、わかった。わかったから。もうしない、たぶん」 うっかりすると長くなりそうな説教を、嫌そうな表情を浮かべて回避しようとするのを見て、ホーネックは肩を落とす。 結局は惚れたほうが負けなんだよなぁと思いつつ、 「コレが原因ですか」 「ああ」 ホーネックの言葉に、ゼロが視線をあげた。 最初の報告では、イレギュラーの数は三十程度。 廃工場で暴れているという通報があり、出撃命令がくだされた。 けれど、現場に着いてみれば何故かその数は倍増していた。 すぐに対処にはいったものの、まったく数が減らない。これはおかしいと、ゼロが工場へと入り、襲い来るイレギュラー達を斬り捨てて先へと進めば、そこでは次から次とへイレギュラーが造られている真っ最中だった。そこには、大量生産を目的に作られた機械が二つほど。 それらがひたすらに、イレギュラーを造りだしていた。 それもゼロのセイバーによって、すぐに動きをとめたのだが。 なるほど、と、納得しながら部下を呼び、調査を命じる。 「ココの騒ぎはこれでいいとして、その指令をとばしてた奴を見つけないとな」 「ですね。ま、どうせすぐに見つけられますよ」 言いながらゼロを振り返り、小さくため息をついた。 「あとは私達がやりますので、隊長はまずその見た目をどうにかしてきてください。割と怖いです」 「ん? そうか?」 見た目も怖いが、早めに帰ってもらってなかなか手をつけないレポートを、さっさと書いて欲しい。 そんな本心を隠しつつ、 「エックス隊長がみたら、絶叫しますね」 そう言ってみる。 その途端、改めて自分の姿を見るかのように視線を体へと移した後に、 「すまん」 言って去っていく後ろ姿を見送りながら、ゼロに対してエックスの名を出すのは、本当に効果覿面なんだなと、改め思ってしまう。 副隊長として、そのコトを少しだけ残念に思いつつ、ホーネックは部下たちへと指令を出した。 湿った髪は面倒なので一つにくくり、一応のメンテでアーマー一式は預けておいた。 なので適当な服に着替えて、机に向かい、先ほどの件についてレポートを書き始める。 珍しく集中して書き上げ―ふと、時計を見上げれば午後八時を過ぎていた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ しっぽの気持ち 「……犬?」 「犬、ですね。ほら、耳もあります」 ドアの向こう。 とてもではないけれど、信じられない―信じたくない光景を見ながらそう言えば、隣で疲労の色を濃く滲ませた隊員が、そう返してきた。 ふわふわと揺れる尻尾。 ぴんっと立った大きな犬の耳。 そんなオプションをくっつけて、興味なさそうに床においてあったボールを蹴り飛ばす。 そんなゼロの姿をみて、もう一度隣の隊員を見れば、彼は心底疲れたようにため息をついていた。 聞けば、電脳空間でイレギュラーを追いつめた際、悪足掻きをした相手にウイルスをふっかけられたらしい。 とりあえず倒して現実世界に戻ったら、この状態だったとか。 まさか現実世界でこんな影響があるとは……どんなウイルスだったんだろう。 恐々問いかけてみれば、犬化ウイルスだという。 ……うん……猫化ウイルスがあるんだから、犬になっちゃうのもあるかもしれないね。 「そのウイルスのせいで、だいぶ犬化しているらしくて、ココに連れてくるまでが、大惨事でして……理性もどっかに消えちゃったのか、本当に犬みたいに自由になっているというか」 「そ……そっかぁ……」 理性なくなっちゃったかー 「ホーネック副隊長は……羽根を引っこ抜かれたので、いまメディカルルームに行っているんですが」 ―なにがあった、なにが。 思うが、口にはしない。やぶ蛇はよくないよね。 「それでですね、副隊長もですが、みなさん口を揃えて言うんですよ。ああこれは、エックス隊長に任せるべきだって」 「おれ!? メディカルルームに連れていったほうが」 「そのメディカルルームの皆さんからも、そう言われましたので……というか、暴れて計器類をダメにしたので、相当お怒りでして」 「……あぁ……」 元々検査が嫌いだからか、犬になって理性を無くしてしまったせいで暴れたのかもしれない。 「けど、おれだってそんな状態のゼロを預かって、大丈夫かどうか……」 「いえ、きっと大丈夫です。だって副隊長が『エックス隊長呼んでこいっ』って言った瞬間、お座りして尻尾ふりましたから」 「えぇ……」 困惑しつつも、仕方なく促されるままドアを開ければ、その音に反応したようにゼロが振り返り― 「……!」 おれの姿を見るや否や、一瞬で間を詰めるかのように飛びかかってきた。 「うっわぁっ」 咄嗟に受け入れる体制にしたからか、倒れ込むような事態にはならなかったことに安堵の息をつく。 って、いやいや。安心している場合じゃない。 このままぶん投げられたり、体をぎりぎりと締め付けてくるかもしれない。 慌ててゼロの様子を伺えば―ぱったぱったと、ちぎれんばかりに尻尾を振っているのがみえた。 「えぇ~……」 「ほら、大丈夫だったでしょう?」 ぎゅうぎゅうと抱きしめられて困惑の声をあげれば、隊員は満足そうに頷いている。 「……なにがどう大丈夫なのか……ちっともわからないけど、まぁ……うん。 そういうコトなら預かるよ」 押しつけられたような気もするけれど、解除できるまでの間だけなら、そう問題はないだろうと判断するしかない。 隊員は、明らかにほっとしたように笑みを浮かべた。 「よかった……本当によかった……これで副長の触覚が抜かれたのも無駄ではなかったというものです」 あれも抜かれたのか……なんでそんなに……犬の本能かなんかなのかな…… 「そちらの隊には、こちらから説明しておきますので……隊長の相手をお願いします。ワクチンプログラムもあと数時間ほどでできるらしいので」 「あ、うん。ありがとう」 脳裏に『またかぁ』と言う顔をした彼らの顔が過ぎるけど、まぁ、そのとおりいつもの事なので……あとは任せても大丈夫だろう。 「隊長が元に戻って、一連のコトを覚えていたら……すまん、で終わらせそうですよね」 「むしろ覚えていたら、暫く機嫌が悪そうだけどもね」 不可抗力で犬になっていたとは言え、部下の羽根やらなにやら引っこ抜いたり、あまつさえボールでじゃらされそうになったりしていたのは、ゼロにとって不覚でしかないだろうし。 ……もしも聞かれたら……おとなしくしていたよって答えておこうかな。