ヤーレンソーラン！ エンヤコーラ！ 騒々しい音が聞こえる。それはふいに訪れたものではなく、まるで遠くから来たような、あるいは自分が遠くから行ったのかもしれない。 いや。そんなはずは。だって自分は動いていないのだから。 ……いや、いや。どうだろう？　さきほどまでの自分がよくわからない。動いていたのか、止まっていたのか、座っていたのか、立っていたのか、何もかもわからない。 わかっているのは、自分が『自分』であることだけだ。 視界が開く。 そこには宴があった。みな酔いに酔って、盃を交わし合っている。 けれど、かれらは誰だろう？　みな同じ顔、同じ体をしていて、全くの見分けがつかない。だが、深く知っているような気もする。他人ではないかのような親近感を覚える。 「あら。あなたは『あなた』なのね」 今度こそふいに、声が聞こえた。 そちらを向く。 そこにはひとりの少女がいた。