
問題解決こそ仕事---- 私の「前職」の考え⽅は「開発は⾃分で考え抜け」が根底にありました。これは⽇本のソフトウェア屋さんとしては珍しく、この考え⽅を共通認識にする、皆で浸透させていくことに成功したのは、「開発論」というものの存在が⼤きいです。⼤きいですが、⾔葉にしてみると「開発論」って⼤層な名前ですよね。常にその説明に苦慮してきまして、まあ、なんかそういう参考図書みたいなものがほしいと思っていました。 筆者が新卒⼊社した会社と、それを知る仲間にちょっと⾯⽩がってもらいたい気持ちで書き始めました。失敗も数多かれど、成功していた部分も同じくらいかそれ以上に多く、そのすべてを 20 年弱楽しみながら過ごせたことが⾃分にとっては財産です。「開発論」、筆者の新卒⼊社した会社の開発チームに代々伝わる⽂書、それを懐かしもうとした動機によるものです。UNIX 哲学ってありますね。⼀般語に直すならそういうやつです。またそのエッセンスは ドメイン駆動設計のようでもあります。でも読み直すと経営哲学のようでもある。こう書くと格好良いですが、私がそれに気づいたのは 2020 年代に近いので、まあそれまで私の中で⾔語化もできていなければどう咀嚼したものかなかなか難しいものでした。 筆者は 2003 年、国産 ERP パッケージ ソフト会社に新卒⼊社、開発経験、マネジメント経験、上海赴任や、産休育休経験を経て 20 年弱、現在はクラウドベンダーの中の⼈をしています。そうでありながらも、思い起こすたびにこの新卒⼊社した会社というのは⾃分の考えのよりどころであり、良くも悪くも⾃分の思考の癖を形作った第⼆の故郷だなと感じます。決して良いところばかりではないのですが。 この本の主語は「私」です。私⽬線で書いています。物事には多様な⾒⽅があります。私を知る⼈も知らない⼈も、上の会社を良く知る⼈も知らない⼈も、なんとなく当時⽇系 IT 史の奇跡とも⾔われた会社のプロダクト開発が、どういった理念のもとに築かれたのか、イチ開発者 n=1 ⽬線の戯⾔として楽しんでいただけたらと思います。ま、そんな⼤層なもんじゃないけどな。 技術書典 16 に初出のもの。