新層 まったく新しい勉強会成果論文集
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本書は、阿部幸大『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(光文社、2024年)の有志読者で勉強会をし、その成果として完成させた論文を収録した一冊です。最終的に6名の参加者が論文を提出しました。藤井佯主宰。 本の詳細→A5判・144ページ。「どのように論文を書いたか」執筆者へのアンケートpdfのおまけつき。 以下、タイトルと詳細です。 鷲羽巧「投壜通信——歴史哲学から『氷菓』を読み直す」 野家啓一やカルロ・ギンズブルグ、そしてヴァルター・ベンヤミンらの歴史哲学を参照しながら米澤穂信『氷菓』を読み直すことによって、同作の歴史哲学を明らかにすることを試みる。 藤井佯「荒野を耕す責任——Web漫画『胎界主』とハンナ・アーレント」 2005年からweb上にて連載されている漫画作品『胎界主』を論じる。同作において重要なタームである「責任」「子ども」という視点から、作中において果たされなかった子どもへの責任についてフェミニズムの文脈から捉え直す。 はづき真理「描かれているが、原因を名指しされない「子どもの涙」——ケストナー『点子ちゃんとアントン』におけるアントンの不自由さについて」 ケストナーの児童文学において名指しされていない「涙」の原因を「親に愛されているがゆえの選択の不自由さ」に求め、ケストナーが意図していなかったわずかな綻びを示す。 おちこち「幽霊は「戦後」に憑りつく——アンブローズ・ビアスの幽霊小説と南北戦争」 アンブローズ・ビアスの、戦争小説や箴言集の陰に隠れがちないくつかの幽霊小説を取り上げ、他作品と同様に南北戦争の影響がうかがえることを示し、ビアスの再評価を目論む。 府屋綾「同床異夢の綱引き——帝国日本下の亡命独立運動家たち」 19世紀後半から20世紀初頭にかけて近代国家として成立していった帝国日本において、日本に亡命したアジアの運動家たちの動向を詳察し、亡命活動家がいかに自身の理想と他者の思惑との間で揺れ動いたかを論じる。 阿部登龍「キツネを飼いなら(ケア)したのは誰か——ルイセンコ主義下の家畜化実験とケアの倫理」 ルイセンコ主義による生物学者への弾圧が続くなかソビエト連邦で行われた、遺伝学者ドミトリ・ベリャーエフによるギンギツネの家畜化実験の詳細はこれまで広く知られてこなかった。この家畜化実験について、ケアの倫理を援用しながら再検討することで、女性たちのケアの営みが科学研究から多重の疎外を受けてきたことを指摘する。 この本に収録されている6編の論文は、どれもその人だからこそ書ける題材であり、論文を読み慣れていなくても、その分野に詳しくなくても楽しめるようなつくりになっています。アカデミックライティングを学んだことがなかったり、論文を書き慣れていなかった段階からスタートした私たちですが、なかなか面白い論文が書けたと思います。論文に面白さは必須ではありませんが、私たちはあえて、私たちの論文は面白いと言い切ってしまいます。目指したのは、読者が自分でも論文を書きたくなってしまう面白さです。 ぜひお手にとってご覧ください。