午睡の夢
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バンユウト初の詩集です。自らの生命をかけて書いた、幻想的かつ孤独を描いた夢のような詩集です。 【試し読み】 「緑の部屋」 目が覚めた。八十二時間前に。画面に向かう。八十一時間前から。白々とした表面には、文字が幾つか並ぶ。ひらがなだったり、カタカナだったり、漢字だったり、ローマ字だったり。それらは増えたり、減ったりを繰り返す。耳には、のんびりと口を開ける男の英語が響く。ロンドンの日常を呟く。酒焼けもしてない喉で、パブについて語る。ビール、ジン、スコッチウイスキー。僕の喉が液体を欲する。眠らない為の液体を。コーヒー、抹茶、紅茶。煙草を咥え、燃やす。目に煙が入る。飲んだ液体が涙になる。 閉じられた部屋。ティール色の壁。フラ・アンジェリコの絵が僕に語りかける。また、朝がくる。姿勢を正せ。濃緑のカーテンを少し開ける、絹製の薄いカーテンごしに青白い光を脳が察知する。赤い液体が全身を駆け巡る。背中を折るな。足を組むな。 灰色の大地では、黒い生き物が一定の距離を保ちながら一定の方向に動く。みな背筋が曲がっている。大天使ガブリエル、なぜあなたは僕に姿勢を正せというのだ。見ろ、みな曲がっているぞ。 姿勢を正せ。目覚めた者よ。二度と眠らぬために。 言葉がつまる。詰まるところ詰んだ。もう書くことなどできぬ。 なあ、大天使ガブリエルよ。あなたは言葉を連れてきてくれるのではないのか。この緑の部屋に言葉を撒いてくれさえすればいいんだ。僕は、その言葉を捕まえるから。
目次
あるモノの眼 緑の部屋 押しつぶされる闇の中で 詩的なもの 雨/世界 重み 腹の内部 まっすぐな捻れたもの 午睡の夢 楼台 穏やかな倦怠

