栞と羅針盤──短い書評コレクション①(国内小説編)
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2005年から2021年までの間に新聞や雑誌に発表した比較的みじかい(700字から2400字程度まで)ブックレビューから、現代日本文学の羅針盤となる作家9人の28作を厳選しました。現代小説をどこから読んだらいいのかわからない方、まずここから読み始めてみては? 【目次・書評を収録した作品】 栞と羅針盤──まえがき 堀江敏幸『未見坂』『なずな』『バン・マリーへの手紙』『河岸忘日抄』★ 松家仁之『沈むフランシス』『光の犬』『泡』★ 絲山秋子『沖で待つ』『忘れられたワルツ』『離陸』『夢も見ずに眠った。』『御社のチャラ男』 星野智幸『われら猫の子』『アルカロイド・ラヴァーズ』『呪文』『夜は終わらない』 保坂和志『小説、世界の奏でる音楽』『未明の闘争』 古川日出男『女たち三百人の裏切りの書』『聖家族』『おおきな森』『馬たちよ、それでも光は無垢で』★ 藤谷治『二都』『世界でいちばん美しい』★ 黒川創『京都』『暗殺者たち』/佐伯一麦『渡良瀬』『山海記』★ (無印は短い書評、★は少し長い書評) (文庫判・80 ページ 無線綴じ1300 円+ 税)
栞と羅針盤──まえがき
栞と羅針盤──まえがき 人を本へと導く仕組みとして、広く行われていることの一つが書評である。新聞や雑誌、ネットメディアも含めると日々、とてつもない数の書評が書かれている。書評を専門とする書評家から一般の読者によるブックレビューまで、その裾野は広い。 私自身、これまで三十年近くの間、さまざまな場所に書評を書いてきた。仕事の一部としてだけでなく、小説や文学に向かい合う、ひとつの方法としてたくさんの書評を書いた。だが、それらの多くは最初の掲載時にのみ読まれ、あとは消えてしまう。書評の対象となるそのときどきの新刊も、書評とともに忘れ去られてしまう。 本とは──ここではあえて「書物とは」と言いたいが──そのような一過性のものではないはずだ。であるならば、書物を紹介し、人をそのもとへと導くために書かれる書評の文章も、一時的に読まれ、あとは消えていくものだとは思いたくない。 この小さな本はそのような考えから編まれている。 二〇〇二年に最初の文芸評論の著作を出して以後、新聞や雑誌に長短さまざまな分量の書評をコンスタントに書くようになり、数え上げればそれらはゆうに七〇〇本を超える。これらの書評や文庫解説、文芸評論のうち、長めのもの(原稿用紙一〇枚、四〇〇〇字以上)は、破船房から他のかたちで何冊かの本にまとめた。 しかし、それより短い新聞や雑誌向けの書評(七〇〇字から一〇〇〇字程度)や、文芸誌に書いた中くらいの長さの書評(二五〇〇字程度)は、二度と読まれることのないまま、そのほとんどがハードディスクのなかに埋もれ、一過性のエフェメラルなテキストとして忘れ去られている──そのときに論じた対象の書物とともに。 逆説的とも言うべきは、こうして読み捨てられる短い書評こそが、読書の入り口としてはふさわしいということだ。新聞や雑誌の広い読者に向けて書いた短い書評の言葉の一片のほうが、あんがい飛距離をもつのかもしれない。ならばそれらの文章を編むことで、文学の方向性を指し示す、小さな書評集がつくれるのではないか。そう思って過去の書評をあらためて読み直し、二八本を選んだのが本書『栞と羅針盤』である。 * 編纂にあたっては、私自身が小説や文学について考えるとき、まさに羅針盤の役割を果たしてきた同時代作家の作品である、という一点を基準とした。その作品を二十年以上にわたり──三十年を越える人もいる──読み続けてきた信頼すべき作家たちから九人に絞った。収めた書評はすべて単行本の時点で読み、私自身が選書できる連載枠や文芸誌上で紹介した作品である。 もっとも古い文章は二〇〇五年に書かれ、もっとも新しいものは二〇二一年に書かれた。現在も文庫本で手に入りやすい作品もあれば、書店では入手が困難な作品もある。しかし図書館や古書店を利用すれば、アクセスできない作品は一つもない。本書を読んで好きになった作家がいたら、破船房の他の本に収めたより長い書評や評論も読んでいただければ幸いである。 私にとって、長きにわたり信頼すべき羅針盤となってきた小説作品が、こんどは読者にとってその役割を果たしてくれたらと思う。 では、よい航海を!


