令嬢のあとさき
- Digital300 JPY

白パンを選び続ける令嬢の、 たった一度の違和感。 華やかな社交界の夜と、 朝のパン籠。 重さを知ったあと、 いつもの柔らかさは少しだけ頼りなくなる。 静かな一夜を描いた短編PDF作品。 ・抜粋サンプル 朝のテーブルには、毎日すこしだけ中身の違うパンの籠が並ぶ。 白パン、ライ麦パン、クロワッサン。 わたしはいつも、迷わず白パンを取る。 柔らかくて、何も考えずに飲み込める味だから。 その朝だけ、手が勝手に別の方へ伸びた。 理由もないのに、気づけば指先はライ麦パンを掴んでいた。 触った感じも見た目どおり、少し固い。 ナイフを入れると、皮がかすかに音を立てる。 噛むたびに、顎の付け根がゆっくり動く。 噛み締めるほど、鼻の奥に土っぽい穀物の匂いが広がる。 洗練とは縁のない、重たい匂い。
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