悪い予感のかけらもないさ
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【およそ10年続けてきた一人暮らし最終年の記録】 この本の大部分は、2024年、わたしが27歳のときにNoteに投稿していた日記をまとめ、少し手を加えたものです。 前の年は転職をして慌ただしく、変化の多い1年でした。 それに比べると2024年は穏やかで、安定した1年だったと思います。付き合っていた彼女と将来のことを考え始め、1月の寒い夜、それまで胸の奥で何度も反芻していた「一緒に住もう」という言葉を、思い切って口にしました。彼女は少し驚いた顔を見せたあと、笑ってうなずいてくれました。その小さなやり取りで、翌年からの同棲が決まりました。つまりこの日記は、大学1年生からおよそ10年間続けてきた一人暮らしの最終年の記録でもあります。 振り返れば、人生の節目を前にして静かな1年でした。大きな変化の予感を意識しつつ、その前に広がっていた凪のような日々。 日記を読み返すと、当時はこんな感情だったなと微笑ましくなります。同時に、当時の自分が繰り返し感じていたことにも気づきます。一つは、大切な人に素直になれない、自分の未熟さへの苛立ち。もう一つは、自分を変えられるのかという不安。価値観もそうですし、時間の使い方や、生活における優先順位の付け方みたいなものも含めてです。そして、30歳へ近づいていく体と心の変化。 比較的穏やかに過ぎる日々に漂いながらも、心の内ではすでに、変化へ向けた準備が始まっていたのだと思います。 2025年のわたしは、2024年とはまた違うかたちで安定しています。彼女と一緒の暮らしが始まり、生活は大きく変わりました。最初は少し適応に苦労したところもありましたが、彼女のおおらかさに助けられ、今はうまくやれています。 一人暮らしの楽しさ、気楽さ、自由。二人で暮らす安心感。これら両方を同時に手にすることはできません。わたしは今、後者に身を置きながら、ときに前者を懐かしみつつ、ゆっくりと、これからの時間のかたちを探っています。 仕事もおおむね順調です。波はありますが、お金を稼ぐ手段として割り切って、なんとかやっています。 今後、さらにわたしの人生は変わっていくはずです。また次の階段を登るだろうし、ときには降りることもあるでしょう。だからこそ、せめて、2024年のことを、そしてそれを振り返った今のことを、形にしておきたい。そう思って、この本にまとめました。 もしかしたら、この本を手にしたどこかの誰かの心に残るかもしれない。そんな淡い期待も込めて。 ------------------------------------------- 12月1日(金) 犬を飼うまでは死ねない。 犬を飼ったらもっと死ねない。 1月13日(土) よく晴れた昼下がり、信号待ち。 わたしを含めた大人たちが、横断歩道から少し離れた日陰で信号を待っていたところに、後からやって来た高校生たちが、楽しそうに喋りながら、何の躊躇もなく横断歩道一歩手前の日向まで進んで行った。 その日差しへの無警戒さが若さだなあ。 目の前にある日陰と日向の境目が、大人と若者を二分した。わたしたちは、このたった数歩が踏み出せない。 家に帰って『拾われた男』を観る。『季節のない街』に続いて、仲野太賀強化月間である。しかし、松本穂香がかわいすぎる。 1月29日(火) 映画『哀れなるものたち』を観る。 この世界の醜いものに蓋をせず可視化したら、こんなにも滑稽な光景になる。わたしたちが生きてる世界は、こんなにもしょうもない。 それならば、世界に溢れる理不尽に、心身を削られる必要もない。そういうふうに思わせてくれる作品だった。 映画が終わってTwitterを開いたら『セクシー田中さん』原作者の訃報が流れてきた。本当にこの世界はしょうもない。 帰りに本屋に寄る。小学生の男の子が、本棚の一番上の段の本を取ろうとジャンプしている。五回くらい飛んでも届いていなかったので、声をかけて取ってあげた。 久しぶりに純粋な〝良いこと〟をした気がする。とはいえ、誰かに報告できるほどのレベルのことではないので、ここに書かせてください。 4月12日(金) メロンソーダを毎日好きなだけ飲めるくらい、健康に無頓着になりたい。自分をぞんざいに扱える人に、少し憧れる。 5月2日(木) 理不尽なことで怒られても、自分は悪くないと思えるほどの行動をちゃんとしておけば、そんなに腹を立てずにいられるらしい。最近気づいた。 新宿武蔵野館で『パターソン』を観る。 乗客の会話に耳を傾け、穏やかな顔でバスを運転するパターソン。運転席の窓いっぱいに広がる、なんでもない風景がただ素晴らしい。 一週間のなかで、毎日繰り返される習慣と、ふいに混じり込む異物。その両方が重なって、生活はかたちづくられる。 生活のなかで、言葉は強くなる。 あと、パターソンのランチボックスがすごくかわいかった。欲しい。 10月6日(日) 「すべてのことに理由がほしい」──そう思わなくなることが、大人になるということなのかもしれない。 夜、ケンタッキーを食べた。悪質な油が血となって体中を駆けめぐっているような感覚。腕がじんじんと熱い。 ------------------------------------------- 『悪い予感のかけらもないさ』 B6サイズ / 166ページ 発行日:2025.12.01 ------------------------------------------- ※複数冊ご購入の場合、配送サイズの都合により分割発送となる場合があります。 ※恐れ入りますが、住所入力不備による再発送は再度送料を頂戴します。マンション・アパートの部屋番号など、今一度ご確認くださいませ。 -------------------------------------------







