束ねれば花束
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来なかったバス、胸を打たなくなった音楽、そばにいないのに離れないひと、雨にも雪にもなりきれない三月のみぞれ。 思い出すこと/言葉にすること/失われていくことのあいだにある、触りきれないものを描いたエッセイ四本を収録。 2026年5月4日 文学フリマ東京42 発行 本文52頁/550円(通販価格) 文庫判 【本文より】 思っていることをそのまま言葉にする、それだけのことがなぜこんなにも難しいのだろう。心と口は、なぜいつもこんなにも遠いのだろう。想いをひとつの言葉に託すということは、ほかの無数の言葉を手放すということだ。 (「軽やかな諦め」) いまの私は、共感がこわい。重なった気がしても、たいていはただ重ねただけだ。感情を横取りするような、その横暴さ。 (「あの娘わたしがTSUTAYAに行かなくなったと知ったらどんな顔するだろう」) それきり私たちは言葉を放棄して、訪れた静寂に体を浸した。そのうち忍び寄るように、この沈黙に意味が伴うだろう。こんなにもなにもないのに、あとから感傷的な景色に書き換えられてしまう予感があって、おそろしかった。 (「きみはあなたのことではない」) 立ち上がって箪笥をあけると、桜色のカーディガンを持ってそばへ戻った。それをあなたの肩にかけたとき、その体の薄さにはっとして、また新鮮に狼狽える。 私は笹舟が沈むところを見たことがなかった。それはどれほど静かな沈没だろうか。 (「水際」)


