ぽぽぽ
- ¥ 300
A5 110ページ 2018/09/09(日)発行 へにゃぽちゃんとへにゃらぽっちぽー兄さんはいろいろなひとたちに出会います。こんにちはこんにちは。本のひと、サボテンのひと、山のひと、エレベーターのひと、多くの方々がそれぞれのまいにちをすごしているのだなあ。 「ぽ」「ぽぽ」に続いての短編集なのです。どの本からでも、どのお話からでも、たのしく読むことができます。 以下の目次をごらんください。短編「今日のお天気」を、このページ下部に載せておりますので読んでみてくださいな。 目次 本屋さん 7 おめでとうへにゃぽちゃん 22 よいしょさんのいちにち 29 金鯱くん 46 工場見学 57 鳩時計 70 今日のお天気 73 もくもくフェスティバル 81 エレベーターくん 97
今日のお天気
へにゃぽちゃんはおでかけをします。しかしなんだか曇り空です。雨が降ってくるのかな、傘を持っていこうかな。テレビをつけると、ちょうど「今日のお天気」という番組をやっています。 《今日のお天気》 タイトルが画面に映し出されます。 「みなさんおはようございます、今日のお天気です」 「この番組では今日のお天気についてお伝えします」 おはようございます。キャスターのおふたりに今日のお天気の解説をしていただきましょう。 「今朝は風が冷たいですね」 「そろそろ寒くなってくる時期ですねえ」 「手足がひんやりとしてしまいます」 「私はこたつを出しました」 「冬がやってくるのですなあ」 大きなテーブルを囲んで、コメンテーターのみなさんが今日のお天気についてわいわいと語り合っています。天気予報にしてはなかなかの大人数ですね。 「冬といえば鍋ですね」 「お、いいですねえ」 「ちょうどここに春菊があります」 「鶏肉もありますよ」 「ガスコンロを貸してもらえませんか」 話がそれてきました。このひとたちは朝っぱらから鍋を食べようとしています。それはともかく、今日の天気を教えてもらえないでしょうか。 「今は曇っていますが、どんな天気になるのでしょう」 やっと本題に入るようです。 「今日私はピクニックに行くのです」 「そうですか、晴れるといいですねえ」 「洗濯物を干してきたので、雨が降ると困ってしまいます」 「晴れるといいですねえ」 「晴れるといいですねえ」 コメンテーターのみなさんが天気を知りたがっています。おでかけをするへにゃぽちゃんも、晴れるといいなあと思います。 カメラがキャスターのおふたりを映します。ここから天気図や衛星写真を使って、今日の天気予報をしてくれるのでしょう。 「晴れるといいですねえ」 「晴れるといいですねえ」 しみじみと話します。 《今日のお天気:おわり》 画面に表示されて、番組が終わりました。今日のお天気について語り合う番組だったようです。へにゃぽちゃんは折りたたみ傘を持って家を出ました。 あの番組はなんだったのでしょうか。次の日もテレビをつけてみるへにゃぽちゃんです。 《昨日のお天気》 タイトルが出てきます。 「昨日は午後から降ってきましたね」 「私は傘を持っていたので楽しくお散歩ができました」 「洗濯物が全部濡れてしまい着る服がないのです」 「新しい合羽を買ったのですよ」 「おお、これはかっこいいですねえ」 おしゃれな傘をくるくると回しているひと、パンツ一丁のひと、雨合羽を見せびらかしているひとがいます。 《明日は雪が降るのです》 どうやらこの番組は毎日タイトルが変わるようです。 「おはようございます!」 「グッドモーニング!」 キャスターのおふたりはうきうきとしています。 「明日は雪が降るのです」 おや、しっかりと予報をしています。 「降るといいなあと思います」 予報ではなかったようです。 コメンテーターのみなさんはどうでしょう。 「そろそろ雪が降るといいですね」 「ゆきだるまを作りたいですねえ」 「かまくらでごろごろします」 「雪が降るとうれしくなってしまいます」 「降らないかなあ」 わくわくとしています。 「にゃぽ!」 へにゃぽちゃんはびっくりです。翌朝、カーテンを開けるとひらひらと雪が舞っています。 「ぽぽぽー! へにゃらぽっちぽー!」 へにゃらぽっちぽー兄さんが駆け出していきました。 それにしても、ほんとうに雪が降るとは驚きです。実はあの番組はちゃんとした天気予報だったのかもしれません。テレビをつけます。 「なんと雪が降っています!」 「びっくりしました!」 キャスターのおふたりは雪を見て驚いています。この番組はちゃんとした天気予報ではありませんでした。 《ゆきがふったらおどります》 タイトルが出てきました。 コメンテーターのみなさんは雪が降ってわくわくそわそわとしているにちがいありません。いつものようにカメラはテーブルを映します。あれ、だれもいません。雪を見てうれしくなったみなさんは、外に出てうきうきと踊っているのです。 「ゆきがふったらおどります」 「ゆきがふったらおどります」 おふたりもそう言いながら出ていきました。カメラマンのひと、照明さん、音声さん、スタッフの方々がぞろぞろと続きます。雪が降ったら踊るのです。カメラはだれもいないスタジオを映しています。番組はほったらかしです。へにゃぽちゃんも外に出てみることにしました。 「ぽぽぽー、ぽぽぽー、ぽぽぽぽぽー」 ふわふわと落ちてくる雪のあいだを、へにゃらぽっちぽー兄さんはふらふらと踊ります。街では老若男女のひとびとが、ひらひら、わくわく、ふわふわ、それぞれのおどりを披露しています。 見上げると、小さく真っ白なかけらがつぎつぎとやってきます。広く高い空です。 「にゃぽ……にゃぽ……にゃぽぽ……」 空と雪の中、へにゃぽちゃんは小さなステップをゆっくりと踏みはじめています。