ひろってください
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2015/08/14 16P 臨静 静雄と幽がけもみみ 前半ちょっと幽静っぽいけど臨静です。 <サンプル> 静雄はペットである。種類は犬だ。 人間用の生体ペットとして生まれたのだが、飼い主に恵まれなかった。 同じペット遺伝子のベースを元に作られた弟の幽は幼い内に飼い主が見つかった。 静雄も遅れて飼いたいという人間が現れたのだが、一週間もした頃、返品したいとメーカーへ訴えた。 「オレがわるいの?」 飼い主には言えなかった。 飼い主はメーカーへ電話を入れ、欠陥商品だ化け物だと喚いたが、返品不可の商品な為、飼い主自ら売りに出した。 一番安値のペットであっても捨てるには高い買物である。ローンを組んで購入するのが普通なくらいだ。 それに、ペットの体内に埋められたチップに書き込まれた情報で、捨てればバレる。バレれば罰金と強制奉仕労働、ペットを飼う権利が十年は剥奪である。そんなリスクは犯せない。 メーカー側は余程の欠陥が無い限りペットを廃棄しない。静雄が飼い難い個体であるのは身を持って把握していたが、その程度はペットの個性の一つとし、返品不可の条件を付けて販売したのだ。 静雄は幸いまだ子供だったので、次の飼い主はすぐに見つかった。 ただ、一度飼い主を得たペットが売りに出されるのには何らかの理由がある。 もっと可愛いペットを見つけたので要らなくなったとか、悪戯が過ぎるだとか、家族と相性が悪いだとか、大きくなり過ぎたとか、財力に見合わないペットを買ってしまって飼い続けられなくなる等。それぞれ何か理由があった。 特に短期間で手放される場合は怪しまれる。 静雄も引き取られる時に新しい飼い主が元の飼い主に理由を訊いたのだが、「仕事が忙しくなって、構ってあげられなくて」とごまかした。 「雄はやんちゃですね。次飼う時は雌の猫にしようかな」 静雄は自分が捨てられる理由は解っているので、次の場所では大人しくしていようと思った。しかし何が切っ掛けになるか自分では解らない。それに、自分自身で止められるものではなかった。 静雄は次の主に怪我をさせてしまい、見放された。 短期間で飼い主が変わるのは、中古のペット売買を副業にしているような者だけだ。 値を下げると更に怪しまれるし、メーカーとの基本契約は所有者が誰になっても効力を発揮するので、基本契約にある値引き可能額までしか値を下げられない。 おかげで安く売り飛ばされる事は無かったが、売りが決まると小さな犬小屋に閉じ込められて、買い手が決まるまでは出して貰えなかった。 静雄は自分の力なら壊して出るのは簡単だったが、また怪我をさせてはいけないし、これ以上自分が傷付くのも怖かったので静かに過ごした。 「ちょっと怪我をしてしまって、面倒を見れそうになくて」 そう言い訳して次の飼い主へ渡った。風呂に入れられ、新品の服を着せられ、見た目だけは整えて。 実際に飼い主は怪我をしていたし、静雄も怪我をしていた。静雄の方は治癒が異様に早く、次の買い手が見に来た時には殆ど治っていた。 通常は大人しく、見た目も良いしまだ子供だったので引き取って貰えた。 結果は同じである。静雄はまた売られる事になった。つまりは捨てられたのだ。