オレの弟を悲しませる奴は 誰であっても許さない!
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ナルサス小説(R-18)からのスピンオフです。 人生初の同人小説「アネモネ」を書かせて頂いたのが2012年のナルサス幸楽!その後、アネモネ2の上下巻を書かせて頂きました。 アネモネは芸能界パラレルで、ナルトもサスケもそれぞれのバンドのボーカリストです。全く違う環境の中で、二人がどのようにめぐり逢い、惹かれ合い、成長していくかというお話の中で、大変重要な役割を担うのがイタチ兄さん! イタチがとにかくサスケが大好きで仕方ないという話ですが、腐的要素は全くありません。 因みに兄さんのバンドのメンバーは、Vo.うちはイタチ、G.デイダラ、飛段のツイン、B.鬼鮫、Dr.サソリの暁チーム。 後書きまで入れて51頁です。 ナルサスがベースとなっています。 NARUTOオンリーイベント「忍ノ國から」2015.02.01.発行です。 在庫処分でここで出させてもらうことにしました。 400円とさせていただきますので、宜しくお願い致します。
試し読み①
《守るべき者》 「オイオイオイ! 今祈りを捧げてるってーのにイタチイタチうるせーぞ! この小判鮫がァァ!」 〝祈り〟という言葉が全く似合わないギラギラした目つきで、飛段はギロッと睨んだ。 その様子を一瞥したサソリは、フンッと鼻で笑うと「いや…小判鮫ではないだろう、あのデカさは…」と言いながらクルクル器用にスティックを回している。 サソリは比較的穏やかに見える髪を赤く染めた美少年だが、その笑みは……触れたら怪我をしそうなヤバい臭いがぷんぷんする。 「確かに、こんな可愛げがない小判鮫はいねぇ。オイラもそう思うな、うん」 自らペイントを施した自慢のギターをギュンギュン鳴らしながら、デイダラはサソリに一票を投じた。 強烈な個性のぶつかり合い。 かなり広めのスタジオが狭くさえ感じる個々の存在感。 各自己の言いたいことしか言わない。 誰も彼らを止められない感満載のこの場に、仕事として参加しているスタッフ達の気遣いはハンパなかった。 一人一人の放つオーラが〝オレ様が一番だ!〟と主張している。協調性ゼロ、それぞれに対する思いやりもなし。 我こそは主役…というイケイケな集団。 こんな圧力の高い連中と一緒にいたら一般人は息苦しくなるのも当然である。 ただ、飛段から小判鮫と言われていた鬼鮫はどっしり構えた強面の筋肉質な大男だが、この中ではまだ落ち着いたオーラを放っていた。 「おかしいですねー、イタチさんが遅れて来るなんて…」 「だから~、イタチイタチうっせー……」 その時重い扉がガタンッと開いた。 「おはようございます」 入ってきたのは、まるで春風のように爽やかな美青年だった。。 重々しい空気が一変して和らぐ。 「イタチさん! おはようございます」 ホッとした表情でスタッフ達が挨拶をした。 そう、この涼やかな男こそ国内最大手ともいわれる芸能事務所団扇プロダクション社長団扇フガクの息子であり、世界に誇る団扇財閥の後継者でもある団扇イタチである。 そして団扇イタチをボーカルとし、ツインギターの飛段、デイダラ、ベースの鬼鮫、ドラムのサソリで形成されたバンドが、日本のロック界をグイグイ引っ張り続ける【SEELE(ゼーレ)】だ! 「イタチさんが遅れてくるなんて滅多にありませんから、心配しましたよ」 「そうか……。ちょっと病院に寄っていた」 鬼鮫の言葉にイタチが答えると、サソリがニヤッと笑い 「そういやぁ、お前の弟ステージから落ちて顔を怪我したんだって? あのきれーな顔に傷とは……ご愁傷さま」 イタチはサソリの挑発に乗ることなく長い黒髪を朱いゴムで束ねるとマイクの前に立った。 ✽✽✽ 団扇プロの稼ぎ頭はゼーレだが、イタチの弟であるサスケがボーカルを努めるビジュアルバンド【Misery(ミザリー)】は今年デビューした期待の新星だ。 年末のショーレースも新人賞間違いなしと言われ、名実共に申し分ない。 それが先日、サスケは初めてのホールツアー中誤ってステージから落ちてしまい、現在都内の病院に入院していた。 本来イタチが仕事に遅れるなどということは有り得ないが、サスケが絡むとその限りではない。 イタチは非の打ち所のない、どこを切っても完璧な姿が現れる金太郎飴みたいな男だ。 ただ―――唯一の弱点がこのサスケであった。 ✽✽✽ 「ちょ、ちょっと待て! イタチィィィー! お前飛ばしすぎだろーが!」 息を切らしてサソリが吠えた。 イタチはさっきサソリが言ったことが余程気に入らなかったと見える。 「何だ、もう終わりか? スタミナ不足だな。それでオレとツアーを回るつもりか」 さっきの爽やかさはどこへやら……その目は、見たら吸い込まれて二度と出てこられないような吸引力を持っている。 体力に余裕がありそうな鬼鮫も、ちょっと堪えているようだ。 かなり激しく立て続けに通したのだろう。 流石のイタチも額にうっすらと汗が滲んでいた。 デイダラに至っては、早くからバテてゴロンと床に転がり動かない。 〝ガチャンッ!〟 「おい、どうした。そんなにとばして大丈夫か?」 遅れて見に来たマネージャーの酒々井が慌ててスタジオに入ってきた。 「酒々井! いいところに来た。イタチに何とかいってやってくれ。ヤローむちゃくちゃ過ぎだぜ! オレが黙ってるからっていい気になってんじゃねーぞォ! オイ!」 目を白黒させながら、飛段もゼェゼェいっている。 「イタチ、お前らしくないな。何かあったのか?」 「いや……最近のメンバーのたるみが気になってな」 「違う! テメェ明らかにオレを狙い撃ちじゃねーか! 何本スティック折らせるつもりだ!」 サソリはどうにも怒りが収まらない様子だ。 「わかったわかった、今日は終わりだ。そんな状態でいい音が出せるとは思えん」 酒々井の言葉にメンバー全員驚いた。 「終わり? どうしてだ、うん。確かにイタチはやりすぎだがそれとこれは別だろう、うん」 床にへばりついた体を半回転させ、デイダラが酒々井を見上げて言った。 「そうだな、確かにメンバー間のいざこざと仕事は別問題。レコーディングは仕事だ。プロとしてきちんとやって貰わないとな」 「ならばなおさらだろう。酒々井、ここで終わりとはお前らしくない采配だ」 「ああ、それだが。オレもこんな状態でお開きにするのは本意ではない。イタチ……会長がお呼びだ」 酒々井の一言でメンバーは黙って片付け始めた。 会長とは、イタチの祖父マダラのことだ。 団扇プロの創立者であり、団扇グループの総帥。 彼の言うことは団扇にとって絶対である。 そもそもこのあくの強いメンバーを集めたのもマダラなのだ。 「今回は珍しくじいさんに救われた気分だ。じゃ、オレはとっとと帰らせてもらうぜ」 サソリは折れていないスティックを束ねると、荷物が置いてある場所に移動した。 「オイラも帰る!」 そう言いながらも床でごろごろしているデイダラに「オイ! 踏んずけられてーか!」と言いながら、飛段は本当に踏んずけてスタジオを出て行った。 「イッテー! 何するんだ、うん。踏んずけられてーかって言い終わる前に踏んでくな! 覚えてろ、うん」 子供のようなデイダラに酒々井は 「今のはお互い様だ。そんな所に寝転がってるお前も悪い」 と言って宥めた。 デイダラはぶつぶつ言いながら荷物をまとめる
試し読み②
物わかりも聞き分けも成績も、どんなことも【良い】の度を超すと嫌味になる。 両親が自由に彼を育てられたならもう少し違っていたかもしれないが、イタチはフガクとミコトの子供である前に団扇グループの後継者であり、普通の子供と同じように育てることは許されなかった。 全ては総帥であるマダラの意志の赴くままに……だったのだ。 マダラはイタチの類まれな才能に目を付け、それを伸ばすべく、イタチが二歳の頃からありとあらゆる帝王学を叩き込んだ。 そんな時、団扇家に次男サスケが生まれた。 サスケはそれはそれは玉のように可愛らしく、女の子と間違われるような男の子で、マダラにとって目の中に入れても痛くない孫となった。 マダラにとってイタチは後継者。サスケこそが一般的に言うところの初孫のポジションとなったのだ。 マダラのサスケへの愛情は想像を絶し、周りはサスケを腫れ物に触るように接するようになっていった。 それもそのはず。 サスケに嫌われることはマダラを敵に回すことになるのだから! そうなるとこの世界では生きていけない……。 この世界というのは、何も芸能界に限ったことではない。 正に、この世に値する。 生きるも死ぬもサスケ次第という立場に置かれた者も少なくなかった。 マダラにしてみれば、何不自由なく与えているつもりだろうが、当の本人にしてみればそんな生活など望んではいない。 顔色を伺う者しか周りにいないという生活がどれほど息苦しくつまらないものか……そして、その現実がサスケをどんどん我が儘にしていった。 誰にも期待しない、何も求めない。 そうすることでしか生きていけない程、サスケは傷つき自らを閉ざしてしまった。 おまけに兄が優秀すぎるときているから、その方面で何の期待をされることもなく『お前はお前のままでいい』などと言われても、そこにはコンプレックスしかない。 そんな現実を知る前の素直で清らかなサスケの幼少時代は、兄を慕い、兄の後を追いかける子供で、イタチにとってそれは今も忘れることが出来ないかけがえのない思い出だ。 サスケが生まれた時に誓った【何があってもお兄ちゃんが絶対守ってやるからな】という言葉を胸に、ずっとずっと兄の心弟知らずなサスケを陰から支えてきた。 『兄さんみたいになりたい!』から『あんたを越えてやる』と変わり果ててしまったサスケにはイタチの心も言葉も届かなくなっていった。 それでもイタチの想いは変わらない。 世界中で誰より弟の事を考え、弟の幸せだけを願い続けるイタチの想いは……変わるはずもない。 イタチの気持ちとは裏腹にサスケはどんどん荒んでしまい、人を信じ傷つく事を恐れ、愛や幸せを感じる心を失っていった。 心を持っていたら苦しい……だから捨てたのだ。 今となっては昔からずっと団扇に仕え、兄弟の育ての親であり家政婦の〝ハル〟だけが心の拠り所だった。 そのサスケが―――。 あのサスケが―――。 生まれて初めて、本気で誰かに心を開いたのだ。 それも……男。 イタチは今、その現実にどう対処していいのか戸惑っていた。 〝団扇イタチ〟初めての戸惑いである。
試し読み③
これまでこんなにもサスケの中に入り込んだ奴を見たことがなかったイタチは、嫉妬混じりの感情を抑えることが出来ず今夜も眠れずにいた。 以前サスケがステージから落ちたのも、男の事を想い注意力が散漫になった事が原因だった。 (ナルトがサスケの顔に傷をつけたようなものだ) そう思うと、腸が煮え繰り返る。 それでも、ときおりはにかみながらもその想いを悟られまいと強がってナルトの話をするサスケが愛しくてたまらない。 そんな愛しい姿を見せてくれるようなったのもナルトがいたからだと思うと、ナルトを無下に扱う気になれなかった。 大変複雑な兄心なのだ。 (どうせ眠れぬのなら歌詞でも考えるか……) イタチは一度はベッドに預けた体を起こすと、おもむろにペンをとり紙に詩を書き始めた。 すると、サスケとナルトの関係を知った頃の気持ちが蘇ってきた……。 【オレのサスケによくも!】 ナルトに会ったら一発入れてやると決めていた。 なのに――― 番組で初めて共演した時、廊下ですれ違い様にサクッと挨拶されてしまった。それも 『イタチさん! あの…オレってば……サスケの事大切にします』 (は? 何だその挨拶は……オレは花嫁の父か!) 間の抜けた挨拶にイタチは耳を疑った。 ナルトにしてみれば、滅多に会うことが出来ないイタチに、どこでどうやって挨拶すべきかと機会をうかがっていたのだろう。 確かにあの時、珍しく近くに誰もいなくてスタッフと少し離れて歩いていた……あんなシチュエーションはそうそうやってはこない。 ここぞとばかりに、ナルトは緊張で顔を赤くして必死に自らの想いをイタチに訴えかけてきた。 (まあ、奴の立場からすればオレに声をかけるというのは相当勇気がいったと思うがな……) そんなナルトにイタチが会ってわかったことは、とにかくサスケの事が大好きでサスケの事で頭がいっぱいだ! ということだった。 だが、ナルトのサスケへの気持ちを知れば知るほど〝サスケの事を誰より知っているのはオレだ。お前如きにサスケの良さがわかってたまるか〟と、何故か敵意剥き出しになってしまう。 それからも局やスタジオで会う度に、ナルトはイタチにきちんと挨拶してきた。