紡がれるは「闘争」と「暴虐」の物語

「何なんだよ、お前らはぁっ！」 　レイジは怒りに打ち震えた。それは目の前で灰色に朽ちた少女への手向けだったろうか。それとも、この無意味な戦いそのものだったろうか。 「何って、知っているんだろう？　お前たちの『色』を奪い続ければ、本当に欲しいものが手に入るんだ。『王』の寵愛だよ」 「このカラーボトルにあるのは魂の色なんだろ。人を苦しめてまで叶えたい願いかよ！」 「彼女も望んで戦っていたはずだ。痛み持つ者（ペインター）が偽善者ぶるなよ。さぁ、戦おうじゃないか。為すべきことを為せ」 「くそっ……。力を……くれ」 　レイジは一枚のカードを手にした。彼をこの世界へと導いたもの。失踪した親友が残していた、二人の関係を繋ぐもの。 　だが、同時に恐れていた。戦ってしまえば、後には戻れない。そんな予感を抱えていたから。 「今だけは、理不尽を打ち破る力を与えてくれ！―――デスティニオス！」 　レイジが大地に色を注げば、地面が隆起し咆哮をあげる。生まれ出でたのは四足の紅き竜。天使と悪魔その双方の性質を持った一対の翼が、中空を軽やかに翔けた。 「だったら……身をもって知ればいい。戦うことの恐怖を、お前自身で！」 　衝動に身を任せる。パーソナルカラーである唐紅（からくれない）は、尽きぬ闘争本能を引き起こす。 「ドラゴン……これが泥人形（クレイ）だと？　馬鹿なっ！」 　唸り声は天を裂き、厚い雲が割れて赤い空が顔を出す。幾重にも折り重なる雷鳴が同時に地を穿ったとき、燃えるはずのない灰色砂漠が、火を纏って炎上した。 「俺は戦う……。こんな奴らは、全部俺が叩き潰す！」 　手首をの皮を噛みちぎったレイジは、溢れ出る紅を大地に注ぎ込む。 　さらなる力を経て燐光を放つデスティニオスは、終わらない戦いを続けたいというレイジの闘争本能を感じ取っていた。