同棲カラ一の一週間3
- ¥ 500
こちら、pixiv内にて公開している本文に加筆、書き下ろし作品を含めた商品になります。 ※土曜日、日曜日、書き下ろし こちらだけでも内容はわかるかと思います。
書き下ろしサンプル
書下ろしサンプル あれは確か、カラ松と一緒に住み始めて3ヵ月程たった頃。初めてカラ松と大喧嘩をした日の話だ。 それは、何気ない事がきっかけだった。 いつものように僕が些細なことで苛立ちを爆発させ、大声で怒鳴り、カラ松にひどいことを口が動くままにぶつけてしまったのだ。それを、日頃の疲れやストレスも重なっていたのか、カラ松がいつもと違い、僕に低くて重い声で『そんなに言うなら、勝手にしろ』と突き放し、事態は悪化する。 勿論盛大に啖呵を切ってしまった後の一松。そんな事を言われてしまえば、引っ込みが効くはずもなく、漸くひねり出した声は情けないほど震えていた。勢いだけの稚拙な捨て台詞を大声で叩き付けて、実家まで寒い街を走った記憶は今思い出しても苦しくなる程だ。 普段運動なんかしない僕が柄にもなく走ったせいで、途中何度も転んでしまい、肘やひざ、手のひらに幾つもの細かい傷をつくりながらも行き場のない憤りと悲しさをぶつけるように、がむしゃらに走った。 そうして、実家にたどり着く頃にはすっかり日も暮れていた。しかし一松は、玄関の前で切れた息を整えるばかりで、引き戸に手をかけることが出来ずに立ちすくむ。そもそも兄弟になんと言っていいかわからないのだ。 それどころか、自己嫌悪に押しつぶされてしまい、呼び鈴を鳴らしてもいいのかすらわからず、途方に暮れる。そうこうしているうちに、酷使した足にとうとう力が入らなくなり、とぼとぼと家の前のベンチに蹲り膝を抱えた。 ぐるぐると頭の中を支配するのは、カラ松との生活が終わってしまったかもしれない。今回ばかりは許してくれないかもしれない。 そんな考えばかりが浮かんでは一松の心を締め付けた。次から次に滲んでは零れる涙を膝にこすりつけては溢れを繰り返し、どれだけの時間がたっただろう。