その薬を飲めば、”死”も治ります。

　目を覚ますと、旅人は名前も記憶も失くしていた。だが幸運なことに、旅人――便宜上ナナシと呼ぶ――は、どんな病も薬で治す事ができる街の中に居た。 　記憶を取り戻すまで滞在することを決めたナナシに、街のドクターは記憶喪失が直る薬があると言う。しかし、過去に同じ薬を飲んだ人間は、今では頭が無くなっていると聞かされる。 「どうです、よく効くのがご理解いただけたでしょう？　悩む頭が無くなりますからね」 　薬を差し出され、飲むことに悩むナナシは。