お前は莫迦だと馬鹿が云い
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10/02/21 A5 34P オフセットフルカラー 400円 主皆(友情寄り) 皆守に反発する葉佩の本編中時系列沿い本
序盤抜粋サンプル
「いつから寝てるの」 棘のある声に、皆守はゆっくりと目を開いた。ぼんやりした目が、葉佩を見て細くなる。決して機嫌よさそうではないその顔に、葉佩は満足した。 「午前、授業出てなかったけど」 「……お前には関係ないだろう」 「そうだね」 あっさりと応えて、葉佩も目を細めた。 「八千穂は気にしてたよ」 「何だよ。お前、あいつに言われて来たのか?」 「そういうんじゃないけどさ。まあでも、八千穂は俺達のこと仲良しだと思ってるみたいだよね」 「じゃなきゃ俺達に宇宙人探しなんざ頼まないだろ……」 「あれねー。何が楽しくてお前と張り込み、って感じだったけど」 そこで葉佩の声は笑みを含んだ。 「あの時の皆守は、ほんっと面白かった」 仏頂面で黙り込んだ皆守に、ますます言葉が弾む。 「皆守はさ。カレー皿の形のUFOが来たら、近づくの? 逃げるの?」 「お前、人を馬鹿にするのもいい加減にしろ」 「いいじゃん。現にカレー馬鹿なんだから」 「……カレーを馬鹿にする気か?」 「ほら、馬鹿」 やれやれ、と肩をすくめてみせた葉佩は、至極楽しそうだった。皆守は顔をしかめた。 「毎日毎日、俺の周りをうろちょろしやがって。何がそんなに楽しいんだ」 「自意識過剰」 平坦にそう言ってから、葉佩はふっと笑った。 「そりゃ、俺は毎日屋上にも保健室にも行くよ。でもそれは、どこもおんなじ」 ポケットに手を突っ込み、取り出したのは鍵束だ。じゃらりと音のするそれを見せながら、自慢するように微笑む。 「俺が行かないとこなんてないし、俺が声かけない顔見知りなんていないんだよ、皆守」 それは事実ではあったが、正しくはなかった。皆守が他の顔見知りと同じなら、こんな物言いはしない。これでも葉佩は、人当たりがいい転校生として通っているのだ。 現時点で葉佩が思い当たるのは、主に二点。まず、皆守に愛想を振りまいても、協力してくれるとは限らないこと。そして、もっと単純で、それゆえに性質の悪いことに。葉佩は、皆守の在り方がどうにも気に食わなかった。