文芸誌『異界觀相vol.2』
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文芸誌『異界觀相』。 異界を觀相し、そのあわいに佇むこと。 第二号のテーマは「迷子なのか?」 仕様 A5・188ページ 著者 松樹凛/伊東黒雲/多賀盛剛/藤井佯/灰谷魚/不死デスク/葦田不見/北上郷夏/小林堂冥/懶い/大槻龍之亮 発行日 2022年11月20日 発行 造鳩會 編集 藤井佯/伊東黒雲 エディトリアルデザイン 亜脩 イラスト/扉 airi maeyama 印刷所 有限会社 国宗 e-mail zoqkai.editorial@gmail.com Twitter @zo_Q_kai
収録作品
【小説】 松樹凛「帰宅」 塾からなかなか帰ってこない息子を心配する母の電話。通話が繋がるたび、母の現実と息子の現実が乖離してゆく。見知らぬ無人駅。いつまでも鳴り続ける自販機のルーレット。……異界は彼方かそれとも此方か。 「落ち着いて、今見えてるものを教えて頂戴」 伊東黒雲「歩調たち」 散歩中に出会った異様な男。彼は私に、景観についての自説を語り聞かせる。図説付きの丁寧な解説で、あなたもきっと散歩の達人に。 「要点は散歩によって何がどのように散るのか、あるいは散らすことができるかにあります。こちらをご覧ください」 多賀盛剛「poacher」 部屋、記憶、移動、時間、そして、からだ 言葉を、人間を注視して、丁寧に並べられた言葉たち。この小説を潜り抜けたとき、何かが以前と異なっている。 「小説をかくことになった、そうなってはじめて、ここからかきはじめるときに、そのかきかたがわからへんかった、」 藤井佯 「わたしはエミュー」 突如、同時多発的に脱走を始めたエミューたち。彼らはどこへ向かい、何を求めるのか。アボリジナルの神話を基に紡がれる、エミューと人間の物語。 「その日、青い火球が天上へとのぼってゆくのをエミューたちは見た。」 灰谷魚「今なら私がもらえます」 山室澄に美しい記憶を植え付けていった女の子。ばったり再会した彼女は新興宗教の上級会員となっていた。彼女とは、驚くほど波長が合う。教団がらみの話にさえならなければ…。ずるずると関係を続ける中、澄は教団主催のパーティーに誘われる。 【漫画】 不死デスク「goodseeing,girl2」 「goodseeing,girl」の続編となる、女子高生二人の日常を描いた8ページ。 シームレスな日常と非日常が、漫画という表現を極限まで活かして生き生きと描かれる。何度も繰り返し読み込みたくなること間違いなしの作品。 【詩】 伊東黒雲「題名」 詩のうえを行き来するわたし、おくれているわたし、もうないはずの映像を進むわたし、戻ることの出来ない風景にまた出会うことができる、としんじるためかく、詩。 葦田不見「その男を尾けて幾星霜が流れたろう」 目を喪った男を尾ける。追い風のいたずらで男たちは交感の連鎖へ取り込まれ、そして… 「私のすることは、見つからないようにある男を尾け、彼が落としていったものを拾うということと、男が拾うものを落としていくということだ。」 北上郷夏「代筆詩篇(フォービズム)」 自らの肉体の出処を捜し、僕は僕からは逃げられず、魂は静かに煌めいている。紙という雪原にそっと残された足跡のような、近づくほどに遠ざかってゆく孤高の詩。 「僕の内側には不在票だけがたまっていく」 【短歌】 小林堂冥 「虜の末裔」 五・七・五・七・七の音の連なり、行の連なり、意味の連なり、それらが幾重にも絡まって多層的な世界が立ち現れる。異界のスリットから生じる干渉縞のような、十三首・十七行の連作。 「壮烈は大万華鏡たわむれに鍵をあずける」 【論考】 懶い「顔を上げて、口を閉じて 小石清『半世界』論」 新興写真先駆者の一人、小石清。中国で従軍カメラマンとして活動した帰国後〈半世界〉を発表する。反戦的な思想の表現であると評されてきた〈半世界〉だが、本当にそれだけか。写真そのものから新たな見方を提示する刺激的論考。 【エッセイ】 大槻龍之亮「この世界そのものの動きについて書こうとするとき、 それは、もう、、詩になっちゃっても、、いい」 わからないことについて本気で考え続ける筆者の、渾身のエッセイ。 「詩と呼ばれるものを見るときに気になることがある。詩と呼ばれるもののかたちについてだ。」 【イラスト/扉】 airi maeyama 【デザイン】 亜脩