ビターエンドに届かない
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文庫本 140ページ "アン"ハッピーエンド短編集第二弾。 ビターエンド"には"届かない儚くも美しい物語から、ビターエンド"にすら"届かない苦くて虚しい物語まで、短編小説七篇を収録。 ◆ つださん 「つださん、つださん、私の願いを叶えてください」 青くて綺麗なものを用意して、夜に一人で『つださん』にお願いすれば願いが叶う。最近流行りのおまじない。気になるBさんとずっと一緒にいたい、と軽い気持ちでおまじないを試してみたが……。 ◆グッバイ、マイフェアローズ 夜道に聞こえた足音。孤独な部屋に響く物音。 その正体は、きっと──最愛の彼女だ。 「砂漠の薔薇」に願ってから、死んだ筈の彼女が少しずつ戻ってくる。 そんなおとぎ話のような奇跡の中で、真っ赤な花弁がまたひらり、と落ちた。 ◆白煙シンドローム キラキラ女子に必要なのは、可愛さと映えとちょっぴりの刺激。 優しいだけの退屈な彼氏よりもリードしてくれる大人の男の方が魅力的。 OLの優奈は、最近とある"火遊び"にハマっていた。シトラスの煙草の匂いを纏った年上の男……「為田さん」と会うことだ。 ◆スタンドバイミー 男友達の颯希と飲みに行った先で出会ったのは、小麦色の肌をした晴れやかな青年、神谷だった。 颯希の友人である彼は、バックパッカーをしながら世界中を旅しているらしい。 話し上手で人好きのする彼に惹かれ、こっそり「ね、神谷さんって恋人とかいるの?」と尋ねると、颯希からは予想外の答えが返ってきて……。 ◆泥の中 避難所に設置された仮設テントの中に並ぶ沢山の納体袋。濃い腐臭と死の気配に満ちた空間で、真っ黒い服を着た男が膝を折る。 「ああ、綺麗な手ですね。よかった、絶対にここだけは残しておきましょう」 エンバーマーを名乗った彼は、泥に塗れた腕を優しく抱き上げ、愛おしげに撫でていた……まるで、死神のように。 ◆煉獄 三年間付き合っていた恋人が死んだ。 使い込んだマグカップの中で随分とぬるくなったコーヒーを啜りながら、冷たくなってしまった恋人をぼんやりと見つめる。 彼の死因は、自殺で間違いない。 だが、彼がなぜ自殺を選んだのか、その明確な理由だけがわからなかった。 ◆ほてる薄紅 大学の入学式の日、戸惑う私の手を引いてくれたのは、溜息が漏れそうなぐらい綺麗な女性だった。彼女に惹かれて同じサークルに入り、届くわけないのに真似をしてみる。 化粧もろくに出来ない自分とは対照的な、お洒落で可愛らしい憧れの先輩。 彼女からはいつだって、柔らかな花のような瑞々しい香りが漂っていた。 ハッピーエンドなんかじゃない。 でも、バッドエンドにもなれやしない。 白と黒の狭間で揺れる、灰色の結末。 この物語は…… ビターエンドに届かない