その館は赤より紅く。
全ての来訪者を拒むように湖中の島に
立つその洋館は、その古びた佇まいとは
裏腹に、まるで息づいているかのように吐息を洩らす。
その館より立ち昇るのは、白い霧の幻想。
それは静かな夏を迎えていた幻想郷から、
ゆっくりと陽の光を奪っていく。
それを望んだのは、幼き紅い月。
それを操るのは、知識と日陰の少女。
夏の幻想郷は、歓迎されない幻によって
白色の幻想に包まれた────
東方紅魔郷を小説化。全編シリアス小説です。
短編「紅い月と狂った時間の従者」も収録。
文庫 252p
厚み 1.4cm