【星満つ2】このよき日に至るまで【再販】
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R5.2.12開催「星満つる月夜に手を繋いで2」発行。 厄災戦後に1年かけてくっつくミス晶のお話。 A5/62P
最初の1/4くらい
冬 厚い雲が空を覆う。日が差してはいるものの、うすぼんやりとしか届かない。 どうなるのかわからない自分の先行きの不安定さを示すようだと詩的なことを考えてしまうくらいに少々晶は感傷的になっていた。白い息をほわほわと吐き、さらにひと際濃い白いモヤを吐き出しながら晶は中庭から魔法舎へ入った。 ばたばたしているうちに随分と冷え込む季節になったものだ。 賢者とその魔法使いとして、大いなる厄災を迎撃する。それが与えられた役目だった。晶たちは見事その役割を果たしたし、なんなら常より遠くに追いやることに成功した。のちに北の双子が言うことには、あと五十年は安泰だろうとのことだ。ムルは遠距離恋愛だと少し落ち込んでいた。人間には長い時間でも魔法使いたちにとっては瞬きの間かもしれないが、少しでもお休みをあげることができたならよかったと思う。 遠ざかる厄災を眺めながら、晶は帰郷の覚悟を決めた。歴代賢者はいつの間にか帰っていたというし、別れを言う時間はないかもしれない。それでも、と戦いで傷を負いながらも誰一人欠けることのなかった己の魔法使いたちを振り返った。彼らも予期していたように表情を硬くする。晶は極力にっこりと笑みを作った。目頭が熱くなる。これでお別れなんて嫌だと思ってしまった。 最前列に前線にいた魔法使いたちがいた。その中の一人、赤い髪の魔法使いが見たことのないような顔をしている。目を大きく開いて、眉をぎゅ、と寄せ、口を引き結んでいた。自惚れかもしれないが、悲し気な顔に晶には見える。真実は彼に聞いたところでわからないだろう 晶の周りに光の粒が舞う。厄災の破片のような光を帯びたそれは見る見るうちに数を増やして晶を取り囲む。光の球体のようなものが徐々に形成されていき、晶は声を上げた。 「みなさーん、ありがとうございました!! どうかお元気で!!」 非常に陳腐な挨拶だった。しかしそれ以外にいいようがない。魔法使いたちがどよめき声を上げたが、光の壁に阻まれて晶には聞こえない。ああこれで終わりか。一時の夢のようだった。 帰りたく、ないな。一瞬だけそう思った。まだここに残している思いがある。もう少し一緒に過ごしたかった。なぜか頭に浮かんだ魔法使いの名を一つ、呟くように呼んだ。 「 ———」 ぱちん、と風船がはじける様な光景だった。目の前を覆っていた光の壁は弾けとんで、晶が驚いて瞬きをすると壁があった場所のすぐ向こう側に、同じく驚いた顔の、名を呼んだ魔法使いがいた。二人でただ驚いた顔で見つめあった、少し間抜けな時間が今思い返すと可笑しい。 つまり、どうやら晶は帰れなかったらしい。 魔法舎に入ると暖かい空気が肺に入ってきて、今度は安堵の息を吐いた。厄災迎撃の頃は冬の始めだったように思うが、退去する魔法使いを見送ったり、使い切っていた生活用品を買い集めたりあれこれしていたらもうすっかり地面から冷たさが昇る季節になっていた。 現在魔法舎には『元』賢者の晶がほとんど一人で住んでいる。三日に一度くらいの頻度で心配なのかネロと、彼と一緒に当面過ごすことにしたリケがやってくる。食事や気候の心配をして、話を沢山してくれる。買い物もそのときに付き添うから一人で行かないよう言われていた。あとは大体の魔法使いたちが一週間に一回とか一ヶ月に一回とかの各々のペースで会いにきてくれている。あのオーエンすら来てくれているのに、ただ一人、会っていない人がいた。 「もう忘れちゃったのかな……」 かの魔法使い用に切らさず買ってある鹿肉がいよいよ怪しくなってきたのでいつものごとく自分で焼いて昼食に食べる。これじゃまるで恋でもしているみたいだ。自分に呆れてため息がでる。元とはいえ仲間だというのに二ヶ月も会いに来ないのに恋も何もあるか。会いに行ってみようかとも思うが、今は冬だ。多分国境を超えた時点で凍死する。 かといってどうしたものか。またいついなくなるともわからないのだから、できるなら会っておきたい。戻れる保証もないが。戻れないのであれば今のように永劫、中央の国の国庫を食い荒らすのは本望ではない。どこかに家を借りて労働の末、人生を全うすることも考えなくては。悩みは尽きなかった。 食後の紅茶を飲み、食堂の天井を仰いだ。高い高い天井に梁が巡らせてある。以前はムルがあの梁の上を歩いたりぶら下がったりしていた。あのときはとても賑やかだったが、今はただ一人分の食器の音を反響させるのみだ。また深い息が漏れた。 空虚な吐息に返事をするように晶が見上げていた天井にぽん、と音を立てて手紙が現れた。ここ数か月で何度か届いたことのある魔法使い式の手紙だ。手紙そのものを鳥とか蝶とかに変化させて送る手段もあるようだが、こっちのほうがすぐ届くとか。ひらひらと空を泳ぎながら晶のもとへ落ちてくる。不思議と目の前に降りてくるからすごい。封を裏返すと世界を旅する仕立て屋と音楽家の名前が書いてあった。 内容は中々会いに行けなくて申し訳ない旨、先日送ったアウターはどう?とか、手紙を書いているときに晶を想ってできた曲の譜面だとか、次の服の布サンプルが貼ってあってどれがいい?とか、優雅な感想が添えられた紅茶の茶葉とクッキーが入っていたりとか、手紙というより、郵便物のようなボリューム感だった。 『そういえば、最近厄災が遠のいたことで、変な宗教が起きてるみたい。どうか気を付けてお過ごしください』 二色のインクで寄せ書きのように書かれた手紙はこの話で締められていた。ネロからも聞いた気がする。怪しい宗教で生贄をささげたりしているらしい。厄災がなくなってもこの世界の憂いはなかなか減らないものだ。 はた、と思いつく。手紙なら届くかもしれない。あの北の湖に届けてもらうにはやはり魔法の力を借りないと難しいかもしれないが、会いに来てくれた魔法使いにお願いしてみよう。 となれば、是非次に来てくれた魔法使いにお願いしたいわけだが、レターセットを今ちょうど切らしていた。中央の国の国章のついた上品に豪華でシンプルなものしかない。あまりに味気ないなと晶は思ってしまった。 現在時刻は昼を少し過ぎたころ。十三時頃と思われる。中央の国の市場まで歩いて十五分ほど、市場は午前の過剰な賑やかさが落ち着いて、でもまばらに人はいる。少し悩んで、よし、と晶は立ち上がる。自室へ向かって鞄を手に取り、気に入りの白いストールを巻いて玄関から少し早歩きで出発した。そして程なく、その視界は暗転する。 ガタガタと揺れる感覚で晶は目を開いた。開いたところで情報が得られるほど明るくもない。仰向けに寝かされた姿勢で細長い箱に入っているようだ。天板がすぐ近くで、棺桶はこういう感じかもしれない。手は腹の上で組むように、足もぎちぎちに固定されているのもその感覚を助長させる。縄が食い込んで、痛みがあった。口には晶が大事に巻いていたストールが乱暴に二重に轡のように巻かれている。痛みや悲しさを堪えて、晶は意識を失う前を思い返した。 晶は魔法舎を出て、十五分ほど歩いて市場につき、なんとそこから三十秒ほどで後頭部を殴られ視界が暗転した。荷馬車にでものっているのか、時折ガタンガタンと雑な揺れが伝わり、固定されている部位が痛んだ。木の板の隙間からひゅうひゅうと冷たい風が吹き込む。嵩張るからだろうか、上着は脱がされている。体を丸めることもできず、ふるりと体を震わせた。 妙に肝が据わるようになってしまった晶が、恐怖心をさておき「寒い」しか思わなくなっていたころ、荷馬車が止まった。がやがやと周りが騒がしくなり、「ご遺体を運べ」とか聞こえた。ご遺体も同乗してるなんて聞いてない。晶が少し血の気を引かせたとき、動いたのはまさしく晶の入った箱だった。 「(ご遺体って……まさか、私……?)」 こんなに手も足も口まで縛っておいて……? 疑問はつきないが、ここで生きているとバレると止めを刺されるかもしれない。大人しく状況把握に努めよう。ぐらぐらと不安定に揺れる木箱が運ばれて、音の響きから洞窟のような場所に入り、さらに少し進んで、ごとんと箱が置かれた。少し揺れのある置き方に近くから怒号が飛んだ。 「おい! 雑に置くな! オズ様への捧げものだぞ!!」 晶は思わず飛び起きるところだった。オズ様……とは? そこにオズがいるのだろうか。捧げもの、とは。三日前にアーサーと一緒に来た時に渡したマドレーヌでは不服だったのだろうか。 数分の混乱を経て晶はオズのニセモノという結論を出した。人間の手を借りて遺体を欲しがるオズなんてどう考えても人違いだ。そのときガタガタと箱が揺れて天板がずれる。慌てて目を閉じた。こんなに本気で死んだふりをする日が来るとは思わなかった。 「ほー、元賢者というのは随分若い女だな」 「処女ですかね?」 人攫いの会話に噴き出すところだった。 「そうじゃなきゃ困る。オズ様は処女が好きだからな」 晶はなんとか耐えた。この人らの信じる『オズ様』も処女好きらしい。熟女好きと言われても戸惑ってしまう。ガタガタとゆれてまた蓋が閉められた。 「儀式はいつだ?」 「今夜だそうです」 晶が魔法舎を出たのは昼過ぎ。あと半日近くはこのままということだ。体勢がどうのとか以前に凍死の可能性がある。今も多分寒くて顔が白いのでバレなかったのだろうから。 ネロの言うことを聞いて誰かと一緒に買い物に行けばよかった。このあとどうなるかわからないが、おそらく皆に心配をかけるだろう。ああ寒い。体が不随意に震える。ストールと上着をとられただけでここまで寒い。 がたり。また木箱が揺れて蓋がずるりと動く。やばい。震えが止められない。目をぎゅ、と瞑った。 「ああ、こんなところにいたんですね。狭くないですか?」 この場に不釣り合いなほどの、おっとりと言っても過言ではない話し方。ここ数か月、待っていたその声。目を開いて名を呼びたいのに、ガタガタ震えて声にならない。 「あれ、また死にかけてます? あそこほど寒くないんですけどね」 いつぞやと同じように胸に手を当てられて呪文が唱えられた。寒さが和らいで、血が巡る。はあ、と息を吐くと同時にシュガーを無造作に突っ込まれる。温かさが戻ってきた。体を起こされてあの頃よりは幾分慣れた手つきで背を撫でられる。 「はあ……ミスラ……?」 「ん、なんです? まだ寒いんですか?」 上半身を預けるように寄りかかって、ミスラを見上げると想像していたより優しい声で返答があった。ミスラは呪文を唱えることもなく、指先だけで晶の拘束を解いていく。縄が食い込んでいた箇所が青黒くなっていた。 ようやく見ることができた箱の外は洞窟のような大きな洞穴のような場所だった。周りを岩壁に囲まれて、音が反響する。今も少し離れたところからバタバタと粗野な声が聞こえていた。何かが起きていることがバレたらしいが怖さはない。 だって、世界で二番目に強い魔法使いがそばにいるのだ。 「何者だ!!オズ様への生贄から離れろ!!!」 「はあ? オズに渡すわけないでしょうが」 「み、みす」 「ようやく捕まえた処女の賢者をみすみす逃すものか」 「はあぁぁぁ?? オズに処女を捧げるんですかあなた」 面倒なことになった。ようやくその姿を見た人さらいは皆黒いローブを被っていて顔などはわからない。十人以上の人数で押しかけてきて口々に抗議している。 晶はまずミスラの誤解を解くために口を開いた。 「ミスラ、この人たちのいう『オズ』は多分違うやつです」 「……ああ、なら早くそう言ってくださいよ。じゃああなたの処女は無事なんですね?」 「えっと……、……」 「は? なんです?」 やんやと騒ぐ人攫いの騒音を背景に、ミスラに怪訝そうに聞き返されて、少し大きな声を要求される。こんなこと大声では言いたくなかったがこれが一番早い解決のような気がした。 「……しょ、処女じゃないです!」 しん、と急に場が静まり返った。心なしか晶の声が反響すらしているような気がする。恥ずかしい。なぜこんなことをはっきり宣言せねばならないのか。オズ(偽)ほんとうに許さない。 いつも動じないことで有名なミスラが信じられないですと言いたげな顔でこちらを見ている。人攫いが徐々にまた騒ぎ出した。やめだやめみたいなことが聞こえる。結構だ。ミスラがようやく口を開く。 「あなた、処女じゃなかったんですか」 「……まあ、はい」 「どこのどいつです」 殺してやります。そういってミスラは水晶の髑髏を取り出した。再会して一番の殺気だ。何で怒っているのか晶には正直よくわからなかった。 「こ、こっちじゃないですよ。元の世界のほうです!」 ぎゅ、とミスラは苦虫を噛んだような顔をした。関係ない話ではあるがミスラは実際に苦虫を噛んでもあまり表情は変わらないような気がする。 人攫いがわらわらと撤収し姿を消し始め、晶が慌てて我に返る。せめて生け捕りにはしたい。ミスラに声を掛けようとしたとき、水晶の髑髏が輝いた。 「『アルシム』」 呪文から少し遅れて、地鳴りがする。少しすると晶が昔やったテレビゲームで出てきたような巨大な火の玉が、大量に天井を突き破って降ってきた。めちゃくちゃ雑な人攫い退治だった。 「まったく油断も隙もないですね」 「す、すみません」 人攫いを役人になんとか引き渡した後。ミスラの箒で魔法舎への帰路を進んでいた。空間転移は気分が乗らないらしい。ミスラはなんだか心底疲れているように見えた。 瓦礫の中からミスラに引っ張り出してもらった上着と、よれよれのストールを大事に抱えなおす。寒さは防寒魔法をかけてもらったので感じはしないが、空気が冷たいのはわかる。不思議な感覚だった。ミスラが面倒そうにほんの少し振り返る。 「それ、もう使えないでしょう」 「……そうだとしても、大事なものなので捨てられないですよ」 「へえ」 綺麗に黒く塗られた爪の先がくるりと動く。晶が後生大事に抱えていたストールが光の粉を帯びて、それが端々へと流れる。風に乗ってキラキラと粉が飛び去ると、晶の手には新品同様の綺麗なストールが握られていた。 「わ……、すごい、すごいですミスラ! ありがとうございます!」 「造作もないですよ」 光の粉をまぶしたようなキラキラした目で晶が感謝を述べる。ミスラはふい、とまた前を見た。 「ミスラ、どうして私があそこにいるってわかったんですか?」 ずっと顔も見せないで。そんな恨み言みたいな言葉は飲み込んだ。ミスラは前を見たまま淡々と、当然のように答えた。 「あなたに守護をかけていたんです。一回くらいなら致死性のどんな攻撃も防ぎます。それが破られたのがわかりました。あなたに死なれるのは、困るので」 「困り、ますか……」 人攫いが晶を遺体だと断定して言っていたことを思い出した。何か薬剤を打たれたのかもしれない。今生きているというのは、つまりそういうことなのだ。 死ぬかもしれなかった。そんな実感がいまさら湧いてくる。冷や汗が出て、心臓がどくどくと嫌な音を立てて軋む。心細くて、前に腰掛ける命の恩人の白衣を少し強く握った。ミスラはちらりと晶を見たが、何も言わず、箒のスピードを上げた。 魔法舎につくと慌てたようにネロが出てきた。今日来てくれる日だと知っていたらあんな目に合うこともなかったな、と晶は猛省した。そのまま晶はかつてのフィガロの部屋に連行され、いつの間に来たのかフィガロの診察を受けていた。 「ああ、これだね。注射痕の周りが痣になってる」 「あの、どんなのを打たれたとかわかるんですか?」 「んー、北の国の熊がこの半分の量で死ぬ感じのやつ」 「……ミスラに感謝しないと……、あれ、ミスラは……?」 「あいつならもう帰ったよ」 「えええ!!!?」 「ん? 大丈夫、心配しないで。また守護かけてくれたみたいだから」 そんなことどうでもいいです、喉元まで出かかった。 中庭の一角にある小さい池が凍って、とてもストール一枚では街まで出かけられない寒さのころ。庭に出て、朝の刺さるような冷気を少しずつ恐る恐る肺に吸い込んで清廉な空気を味わってみる。このあとすぐに室内に駆け込んで、暖炉に張り付くわけだが。空気が澄んでるがゆえに昼頃になれば日の温かさを殊更感じることができる。その少し前までに洗濯物を済ませて、と考えていたとき。 ふわり、と箒が下りてきた。箒の持ち主は器用に箒の上で胡坐をかいている。むっすとした不機嫌な顔で晶を見下ろしていた。バツが悪い子供みたいで思わず晶は笑んだ。 「おはようございます、ミスラ」 「……おはようございます」 むくれた口から白いモヤがふわふわと出る。箒で来たのだろうか。そのわりには鼻も頬も赤くなく、元の白い色のままだった。さすがミスラ。とすん、と軽やかにミスラが地面に降り立った。 食堂で向かい合って座る。お腹が空きました、というので晶と同じ朝食を用意した。いつもより幾分大人しい様子で食事をして、スープを飲み干し、席を立った。まだパンを咀嚼している晶が見上げるとどうぞ、と封筒を一つ差し出した。 「あ、お返事持ってきてくれたんですね。ありがとうございます」 「返事をしないと手紙を送り続ける気でしょうあなた。死者の国が沈んだらどうするんです」 「すみません、ミスラに手紙書くの楽しくて」 「いいですけど。これを置きにきただけなので。では」 耳慣れた呪文を唱えて空間転移の魔法が発動する。扉の向こうは北の国らしくて吹雪がふきこんだ。じつにあっさりと扉が閉められてサラサラと消えていく。 晶は手に持ったままだった封筒を見る。雪のように真っ白な封筒。宛名も差出人も書いていない。談話室においてあったレターナイフで封をあけ、便箋を出す。人攫いから救出されてからほとんど毎日手紙を 出した。というのも魔法使いたちがそれまでより頻繁に魔法舎に訪れるようになったからだが。それから数か月。ミスラから、初めての手紙だった。 達筆なのか汚いのかよくわからない字だった。少し解読に時間がかかった。その日の昼にルチルがきたから聞いてみようかとも思ったが、自力でとりあえず頑張ることにした。そして丸一日ほどかかって短い短い手紙の内容を知った。 『そんなに俺に話すことがあるならこちらで一緒に暮らしますか。世話をさせてあげますよ』 晶は、読めた感動で感嘆の息を吐き、真新しいレターセットを取り出した。 『お断りします』 晶はこの直後に遊びにきた魔法使いに郵送を頼んだわけだが、十分もしないうちにミスラが青筋を浮かべて魔法舎に来ることになる。