ヘータロー、30日間怪異にあう
- 支払いから発送までの日数:7日以内あんしんBOOTHパックで配送予定物販商品(自宅から発送)¥ 1,000

妖怪小説 ・A5・本文112ページ・挿絵:忌木一郎 2021年8月の一ヶ月間カクヨムにて毎日投稿した小説。『稲生物怪録』を下敷きに、少年ヘータローの体験を描く。WEB版にはない後日談も収録。 【冒頭】 0日目 8月1日 夏休みも始まって10日ほど過ぎ、僕は暇だった。 宿題は全く手をつけていないが、やる気がないならないのと同じである。今日も昼過ぎに起きてぼんやりした後、犬のかっちゃんの散歩に出かけた。 かっちゃんのうんこを拾っていると頭の色が独特な高校生の集団がやってきた。高校生と分かったのはマンションの隣の部屋に住むゴンちゃんがその中にいたからだ。ゴンちゃんも高校に上がってすぐ髪を黄色に染めている。 「長い名前の犬が、長いうんこしてんな」 ゴンちゃんのギャグに友達とゲラゲラ笑う。長い名前というのはかっちゃんの犬種「キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル」を指す。かっちゃんは尻尾を振ってゴンちゃんに飛びかかり、ゴンちゃんも嬉しそうにかっちゃんをなで回した。 「俺たち、西の山に肝試しに行くんだけど、ヘータローも行くか?」 と、誘ってくれた。暇なので当然うなずく。かっちゃんは散歩コースが長くなってご機嫌である。 西の山は小学校の時に遠足で登るハイキングコースのある山だ。昼はともかく夕方から夜にかけて薄気味悪い雰囲気になり、山頂の石碑から火の玉が出るという噂もあり怖がられている。真偽は分からない。 僕たちは蒸し暑さでふぅふぅ言いながら山頂まで行った。そして日が暮れるのを待った。しかし何も起こらない。 「つまんねぇな!」と短気な高校生たちは怒り、ゴンちゃんは石碑に小便をした。それを見たら僕もなんとなく催したくなり同じく石碑に小便をした。するとかっちゃんも足を上げて石碑に小便を引っかけたから、不機嫌だった高校生たちも笑い出し、その日は全員楽しく下山した。 そしてその日の晩、僕はふと目を覚ました。時間は丑三つ時。外には大きな太陽があった。