その昔、町に臨む雪山に炎を纏う大鳥がいた。
その鳥は山中の奥深くに棲み着き、雪山に秘められた膨大な冷気を支配していた。
町の人々はその鳥を火鳥と呼び、彼女が持つ力、そして全てを凍てつかせる冷気をおそれ、それらを神の領域で
あるとして崇めるようになった。
幾度も降り注ぐ冷気は神の怒りとして伝えられ、信仰は次第に形を変え、怒りを抑えるための儀式として受け継
がれていった。
そして今、再び儀式を執り行うための準備が進められていた。
祭壇の前には、腕に火鳥を象った紋様を刻んだ少女が立っている。
火鳥に捧げる儀式が始まる