青春ヘラver.8「シティダーク/アンダーグラウンドレトロ」
- ¥ 1,680
大阪大学感傷マゾ研究会の発行する会誌『青春ヘラ』の8号目です。 特集テーマは「シティダーク/アンダーグラウンドレトロ」。 ヴェイパーウェーブ、シティポップ、ニューレトロ、メンヘラ、地雷系といった要素をひとつなぎの潮流と捉え、特集しています。 詳しい内容はこちらをご覧下さい。 https://note.com/hummm09/n/n91d9144f47e4 A5 230ページ ※送料込み
『青春ヘラver.8』内容紹介
1.メンヘラリティ・ザダンカイ(ホリィ・セン+橋田幹+ペシミ) メンヘラはどこから来たのか。メンヘラは何者か。メンヘラはどこへ行くのか。地雷系、量産型、ぴえん系に引き継がれていった特性から、ライトノベルや音声作品に見られるメンヘラ表象、さらにはメンヘラと〈ケア〉の話題まで。文化的側面と研究の蓄積を参照しながら、メンヘラの過去・現在・未来について語り尽くす鼎談です。 2.ライト文芸およびライトノベルにおける〈自殺〉表象について(ペシミ) 「死にたい」が口癖の主人公。飛び込もうとするヒロインを助けたところから始まる恋愛模様。主に中高生をメインターゲットに据えて発表されるライト文芸、ライトノベルの分野において、登場人物の〈自殺〉が描かれる意味とは何か。自死を美的に描いてきた日本文学の歴史を踏まえつつ、ベリス・ゴートの倫理主義を下敷きに、ある種の「ライトさ」を持って表象される〈自殺〉描写について考えます。 3.グッドバイ・マイ・ロング・ロング・サマー(音無蓮) 大学時代の友人『サキ』から旅行に誘われた主人公。来月結婚するという彼女との旅行は、正真正銘、最後の逃避行だった。体を重ねるたびに走馬灯のように蘇るあの日の記憶。やがて彼女のいない助手席だけが、ぽっかりと空いた夏の終わりを告げていた。 4.あらゆる都市はノスタルジーである アニメの都市描写をめぐって(安原まひろ) 『AKIRA』から『シティハンター』、さらには押井守や新海誠まで。アニメーションで描かれてきた新宿の表象──ひいては都市の表象の変遷を追いつつ、アニメという場所で都会/地方都市を描く行為そのものに「喪失のノスタルジー」への欲望を見出す論考。あらかじめ失われた夏のように、常に喪失を予感しながら、我々は風景と接している。そんな心理を浮き彫りにします。 5.シャーデンフロイデ・アイアンメイデン(無為憂) ウイルスハックされたアンドロイドを処理する仕事で生計を立てている主人公の〈潔〉。退廃的な近未来的都市で生きる彼の目に、一機の女性型ヒューマノイドが映し出される。彼女を通じて脳内に流れ込む存在しない記憶、八月三十一日。存在しない日付、存在してはいけない自我。オリジナルとは何か。自我とは何か。ひとつの「バグ」が、「愛」へと変わっていく。 6.病みカルチャーの倫理──「自傷系インフルエンサー」とその倫理的問題について(橋田幹) YOASOBI、たかやん、『NEEDY GIRL OVERDOSE』など、近年「病み」をモチーフにしたヒット作が増えている。そうした作品に向けられる倫理的批判を「アイデンティティ」の観点、さらには受信者側/発信者側の区分から検討し、批判を乗り越えながらグレーな「病み」文化を受容するにはどうすれば良いのかを示します。 7.あの日の記憶、この日の寂寥(森野鏡) 恋人と上手くいかない高校生、そしてそれを異性に相談する主人公。出会いと別れを繰り返し、少年たちは大人になる。現在から見た過去はいつだって感傷的だが、想い出はいずれ風となり、これからの日々を撫でていく。 8.シティポップ、ニュートロ、Y2K、Y3K、──未来を照らす過去と現在の遠近法(柴崎祐二) 『ポップミュージックはリバイバルをくりかえす』『シティポップとは何か』を出版してきた著者による最新論考。SNSやショートムービープラットフォームに基づく環境的要因を踏まえつつ、双方向化/多方向化した現代におけるリバイバルの本懐を見出します。また、そうした架空のノスタルジアが映し出す問題意識が過去だけでなく未来へと接続していく流れを、Y2K、Y3Kへと繋げながら鮮やかに論じます。 9.地下室の邂逅(日比野コレコ) 見慣れた駅の、見慣れない地下室で、〈ういは〉と少年は出会う。文字通り赤裸々に心を開いていく二人と、間を埋めるように横たわる〈おじさん〉。傷つけ合うように、その傷を舐め合うように交わされるコミュニケーションを通じて、やがて細切れとなる会話が、この街に朝を連れてくる。 10.ポストモダンという可能性の条件、あるいはその不可能性の中心──東浩紀とマーク・フィッシャー(幸村燕) 「資本主義リアリズム」というインパクトのある概念で我々のリアリティとそこからくるメランコリーを描き出したマーク・フィッシャーと、ゼロ年代批評の代表格である東浩紀。両者はどの点が共通していて、どの点で違っているのか。「想像力」をキーワードに、相補的な両者の関係を明らかにし、これまで闇にぬかるんでいたゼロ年代批評の側面に視線を折り返します。 11.都合のいい記憶を手繰り寄せて(佐々木チワワ) 『「ぴえん」という病』『歌舞伎町モラトリアム』の著者によるエッセイ。自身の経験や薄暗い都市と密接に結びついた視点から描かれる「暗いエモ」に対する考察が、次第に「エモ」の二面性を浮き彫りにしていきます。 12.地方都市のおけるアンダーネオン形而上学派少女哲学の終焉(海猫沢めろん) 八月になると〈深淵アビス〉に哲学者がやってくる。 バーでウォッカを飲みながら佇む哲学者〈蓮巳サキ〉との「対話」から明かされる、主人公とその妹『冬』についての記憶。本物の妹はどこにいるのか。全ては魅錯網幽域ミサクモウユウイキの果て、紺碧之門コンペキノモンの向こうに答えはある。 13.セカイは日常の中に──「夜のセカイ系」と音に浸る僕たち(武久真士) YOASOBI・ヨルシカ・ずっと真夜中でいいのに。のファンの総称である「夜好性」。彼らの曲では「僕」と「君」とが夜にふたりだけの閉じたセカイを形成し、しばしばそれを死によって完結させようとする。そうした感性を「夜のセカイ系」と名づけ、「夜」「夜景」の閉鎖性を批判的に検討する論考。やがて明らかになる「夜」を礼賛する態度の本質を、丁寧な歌詞分析によって担います。 14.だから〈僕〉は三秋縋を読むのを辞めた(才華) これは、〈僕〉が三秋縋を読めなくなるまでのお話です。 15.どこでもない場所、誰でもない日と──都市と感傷をめぐって(河西李生) 今まであまり論じてこられなかった、感傷マゾにおける「都市」と「風景」。これまでの『青春ヘラ』の表紙から始まり、ボードレール、ベンヤミン、サリンジャー、木澤佐登志らを引きながら、現実および現在を拒否する「シティダーク/アンダーグラウンドレトロ」的な潮流についてまなざします。 16.元彼ゾンビDIY(人間六度) 日大文芸賞にて優秀賞を獲得した本作。元彼、ゾンビ、DIY。荒唐無稽な単語たちが、異常なまでの疾走感で繋げられていく。その繋がりの中で得られるもの、そして失われていくもの。ライトかちスピーディーでありながらディープかつダークな語りの先にあるものとは。 17.僕らから〝エモ〟までも奪ってくれるな─「パターン化された〝エモ〟」小論(竹馬春風) パターン化された“エモ”にすら取り残された僕らは、どうすれば良いのだろうか。『青春ヘラver.1』と『青春ヘラver.4』でエモについて考え続けた筆者の、エモ論集大成。緻密なエモ分析は、やがて鴨川とだめライフに接続してゆく。 18.ティータイム幻想(夢寐) ファッション研究の視点から照らされる、“アングラレトロ”のヴィーナス、鈴木いづみに関するエッセイ。彼女の著作を通して、レトロブームへの真っ当な向き合い方が示され、後には香り立つ紅茶の匂いだけが残る。 19.初音ミクを解放せよ──魔法、体温、センチメンタルジャーニー、違和感、ベッドルーム、そして未来(白河アマネ) ニュートロ、シティポップ、ヴェイパーウェーブ、地雷系、メンヘラ、エモ。これら全ての要素が詰まっている音楽ジャンルこそが「ボーカロイド」である。90年代とボカロの共通項からSF的悲恋まで、あらゆる角度から「ボーカロイド」のダークな部分を凝視する論考。 20.初恋(べっこう飴大魔神) 人生で初めての恋をした。彼女は仮装大賞ガチ勢だった。