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2024/8/3-8/4開催、オールジャンル墓参りWEBオンリー【あなたに会いに来ました】参加作品です。 文庫/209p(目次、扉、あとがき含む) うち96pがカヲシンとしての本文になります。 2023年9月既刊『アフターダーク』より3話目【しんせい】の続編として2話収録しています。 1.『穂孕』 ネオンジェネシスから五年後/Q幕間 存在しないはずのパターン青が検出される海岸、そこには渚カヲルの遺骨があるという。 ────── 車から降りて歩くあいだ、夏の陽が肌を露出している部分に突き刺さり、遅れて布がたくさん重なった部分へ汗が噴きだす。あつい、と意味もなく顎を仰のかせた視界の端で、銀色の毛先が光ったような気がしてどきりとする。 十五歳の身体で死んだ彼は今のシンジよりもずっと背が低いはずだ。それなのに、こうして不在を近くに感じるとき、昔と同じに自分よりも少し高い位置に気配がある気がする。まるで一緒に成長してきたように。そうやってずっと守ってきてくれた。ここまで連れてきてくれた。 海岸に降りる階段の途中で一度立ち止まり、足指を締め付けていた革靴と靴下を脱ぐ。帰りのことは考えなかった。 一段、二段。靴を手にぶら下げ、砂浜へと足をつける。 皮膚が焼けるほど熱い。波に光が砕けて眩しい。生き物が少しずつ暮らし、死ぬようになった海は、LCLに似たうすい血潮の匂いがした。 「カヲルくん、会いに来たよ」 黒いスーツのポケットに入れた端末が、返事をするように警告音を鳴らした。パターン青だ。 ────── 「そんなに、僕のこと好きなの」 懐中電灯の光が揺れる。好きで、好きで、お互いにそうなのに、それでも足りなかった。 少しでも長くこの寂しいひとの腹を満たしつづける方法が、どうしてもわからない。 「あいでなければいけなかった」 そう言ったのだろうか。ずっと調子の変わらなかった声が、そのときだけはほとんど呼吸のように震えたから、シンジにはうまく聞き取れなかった。 (本文より) 2.『先生のこと』 穂孕より数十年後/モブ視点 音楽の仕事をする『わたし』と『先生』の話。 著作を読んで連絡してきたという青年は、そこに記述された、もうだれも知らないはずの先生の名前を口にし「墓参りがしたい」と告げてくる。 ────── ピアノのそばにいるとき先生はいつもほほえんでいる。そのときも、眉こそ困っていたが笑みといっていい表情をしていた。 教えてくれた人──先生の先生が、そうさせていたのだと思う。 「うまく弾く必要はないんだって。自分がいいと思ったら、それでいい」 「いいと思えなかったら?」 「いいなって感じられるまで、同じことを何度でも反復練習する。……僕らはそれしかできなかった」 「それだけじゃ駄目なの?」 「駄目だったのかもしれない。どうしてもできなくて、それでも繰り返して、そのひとはずっと苦しい思いをしてきたから」 先生が立ったままで鍵盤に指を下ろす。わたしが椅子を半分譲ろうとすると、わずかに首を振ってそれを制した。 「でも僕は、一緒にできて楽しかった」 (本文より) ────── ○オンリーのテーマが墓参りのため、人を問わず追悼・葬送の描写があります。 ○『アフターダーク』と併せて、新劇軸においての著しい捏造と自己解釈を含みます。 百合根結女(https://roots-of-lily.booth.pm/)との小説合同誌になります。他ジャンル(UTAU/テドテト、デフォテト)併載であることをご留意ください。 併載作品をお求めの方は、お手数ですが上記リンクのショップよりご購入をお願い致します。(頒布物は全く同じです) 当該作品はイベント当日のみの限定公開として展示しておりました。現在非公開のため、サンプル閲覧をご希望の方は、お手数ですがショップのメッセージやX(Twitter)、pixivのメッセージからご連絡ください。

