謡本『鼓の瀧』観世流節付(能楽台本 能本 復曲 約300年ぶりの復活上演本)
- ¥ 400
有馬ゆかりの幻の能《鼓の瀧》は、世阿弥の『申楽談儀』にも言及のある由緒のある演目です。しかし能としての上演は戦国時代を最後に絶えてしまいます。江戸中期に一時的に復活したことはありましたが、今回、令和4年(2022年)11月に、ゆかりの地で約300年ぶりの復活上演を行いました。その際の謡本(上演台本)です。 復活上演時に可能な情報は全部入れ込んだ解説・注釈付き。
能《鼓の瀧》概要
[登場人物] 前シテ:老人の樵人 後シテ:瀧祭ノ神 ツレ:若い男、または稚児 ワキ:臣下 ワキツレ:臣下の従者 アイ:所の者 [季節]春三月 [場所]摂津国有馬郡鼓の瀧 [曲柄]脇能/初番目物/霊神物 [太鼓]あり [所要時間]1時間20分程度(今回の復元上演による)
能《鼓の瀧》あらすじ
臣下が桜の花に誘われ、摂津国の鼓の山(有馬山)に迷い込む。途中で出会った老人は、臣下に山の名前を教え、鼓の瀧へ案内する。老人はこの瀧は古い和歌にも「音に聞く鼓の瀧をうち見ればただ山川のなるにぞありける」と詠まれていることを語り、有馬山の夜桜の美しさを褒め称える。さらに自分は瀧祭の神だと明かし、瀧壺に姿を消す。 月の光に照らされる夜桜の下、瀧祭の神が姿を現し、様々な舞楽を奏して、君の治世を寿ぐのだった。
能楽の廃曲
現在、能として演じられている演目は約200程度ですが、室町時代から現代までに作られた曲は3,000を超えると言われています。つまり2,800以上の演目が、過去には存在しつつも、現在は演じられない“廃曲”となっています。
能《鼓の瀧》の周辺
《鼓の瀧》は、世阿弥の芸談を記した書物『申楽談儀』にも、謡い方の注意が書かれており、世阿弥によって謡われていたと考えられる由緒のある演目です。 しかし、能としての上演は戦国時代の永禄11年(1568年)の後、稀曲上演が好まれた江戸時代中期の正徳年間(1711年~16年)に何度か上演の記録がある他は、能としての上演は行われていません。 ただ能としての上演は絶えていますが、有馬山の夜桜を美しく謡い上げた部分(能楽専門用語でいうサシ・クセ)のみは、流派により「乱曲」と呼ばれる、最奥の謡物として現在も伝承されています。このことからも、演目としての質の高さは、歴史的・伝統的に評価されてきたといえるでしょう。
書籍データ
発行日 2022年11月 発行元 能楽と郷土を知る会 サイズ B5判 中綴じ32ページ(表紙含む)