筒井康隆論【PDF版】
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「全ての筒井康隆作品はスパイ小説である」と言うと怪訝な顔をされるでしょうが、本論考では、この命題を実証していきます。 代表的なスパイは『家族八景』の七瀬でしょう。彼女は人の心に侵入して、その人を操ろうとするのですから。 身分を偽り、過去に侵入した『時をかける少女』の深町一夫という人物もいました。 また、スパイ小説としての総決算は『俗物図鑑』だと言えます。特殊能力を持つ登場人物たちは全員がスパイの素質を持っています。 そして、身体に対する刑罰や拷問、監禁などの残虐行為も、スパイなら覚悟すべきものです。それは自白を強要したり、人物の思想を矯正したりします。 筒井氏が、三島由紀夫を意識して、しばしばおちょくっていたのも肯けます。三島は、ある意味、自衛隊に対するスパイであったかのようですから。 本論考は『モナドの領域』に至る筒井作品を貫く、スパイ小説としてのロジックを一つ一つ掘り起こしていきます。 登場人物たちの奇矯な行動や残虐シーン。それらを「作品を面白くするための外連味溢れる描写」などと考えるのではなく、まともに、真摯に受け取り、一つ一つに意味があるのだと考えるのです。 永年の筒井ファンも「それは気付かなかった」という点がいくつかあるのではないでしょうか。 扱う作品は『48億の妄想』『馬の首風雲録』『筒井順慶』『脱走と追跡のサンバ』『俗物図鑑』『大いなる助走』『家族八景』『夢の木坂分岐点』『虚人たち』『残像に口紅を』『文学部唯野教授』『朝のガスパール』『ダンシング・ヴァニティ』『聖痕』『モナドの領域』「東海道戦争」「時をかける少女」「幻想の未来」など。 目次 はじめに ■諜報 「コレラ」と『家族八景』 スパイ 身分を偽る・変装する 秘密を探る・探られる 覗く・覗かれる 操る・操られる 『俗物図鑑』 ■放送 テレビ 情報社会 疑似イベント 戦争 ロボット コンピューター・ゲーム 映画 『モナドの領域』 ■刑罰 リビドー 拷問・刑罰・虐待 人造人間と手術 救世主 催眠 夢 睡眠教育と睡眠 治療 別次元への扉 ■感応 ディスコミュニケーション シニフィアンとシニフィエ 情報社会とことば テレパシー ■身体 感染症 爪 人体破壊 内部と外部の反転 時間 ■空間 監禁・拘束 逃走・脱走 トポロジー空間 多元宇宙 多層空間 『パプリカ』 融合した家 ■越境 虚構と現実 境界侵犯 『大いなる助走』 ■進化 食人 破壊 植物人間 『夢の木坂分岐点』 ■消失 ■筒井SF作品のマインドマップ ※レイアウトの変更などは出来ませんので、PC、タブレットでの閲覧を推奨いたします。