小説家から紹介文

＿＿＿＿ 　５秒。 　もう一度、５秒だけ、この絵を見つめてほしい。 　あなたの胸に、どんなものが浮かんだだろう。 　すごい。きれい。壮大。圧倒される。 　そういった、純粋な言葉だろうか。 　それとも、キンと冷えた、鼻や耳が痛いほどの空気だろうか。 　空の下に広がる、水面のゆらぎだろうか。 　耳が痛いほど静かな世界か、キラリと光る流星の音か。 　匂いの少ない、冬の香り。 　もしかしたら、鮮やかな色からコンペイトウの甘みを感じたかもしれない。 　一目見て、心が動いたなら、それをじっくりと眺めてみてほしい。 　一瞬では味わいきれない、たくさんの感動を、あなたの心は受け止められる。 　そして、この絵はそれを、伝えてくれる。 　私たちは、そういう気持ちを「感動」と呼ぶのでしょう。 　雄大な自然、果てのない夜空、肉眼でしか捉えられない、細かな色彩。一瞬のきらめき。 　呼吸を忘れてしまうほどの、数秒。 　そういった、いくつもの感動が、一枚に込められている。 　だから、この絵を美しいと感じて、心が動いたのでしょう。 　――５秒。 　改めて、この絵を見つめてほしい。 　あなただけの感動が、その胸に広がるから。 ＿＿＿＿ 空山　非金