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呪いのような愛 SF怪奇小説「幻想炎熱」 A6/206p 従弟を洗濯機に閉じ込めた事がある。 何歳の時だっただろうか。 正確には、従弟が勝手に入り込んだ洗濯機の扉を叶(かなえ)がパタンと閉めた。 家に来たばかりの新しい窓付き洗濯機。 ドラム式洗濯機の覗き窓が宇宙船の窓みたいだった。 叶は宇宙の外に。従弟の奏(かなで)は宇宙船の中に。お互いに声をかけても何も聞こえない。口がパクパクと動くだけだ。 無垢なごっこ遊びだった。 窓越しに手を重ね合わせると、透明窓のなんとも言えない生冷たさが指に伝う。冬の冷気が包む脱衣所で、ベランダ窓よりはひやりとしないその感触が不思議だった。 小さなおままごとは、その危険性に関わらず穏やかに進んでいった。 叶は大人びた少女だった。でも、洗濯機の扉が内側から開かないことは知らなかった。奏の方もドラム内でのほほんと座り込んでいて、最後まで気付いた様子はなかった。 穏やかで、物静かで、少しトロくて。2つ年の離れた弟みたいな奏。窓の外の叶にはにかみながら手を振っている。 奏の吐息が洗濯機の窓を白く曇らせた。 幽霊でも出てきそうな、薄暗い脱衣所だった。白煙で顔がぼやけた奏こそが幽霊みたいだった。そのままどこかに消えてしまいそう。 それが美しくて、寂しくて。 背後から両親たちの悲鳴が上がるまで、そうして叶と奏は二人だけで遊んでいた。 その後、二人揃って叱られた。 二度とあんなことをしてはならないと懇々続く説教を聞き流しながら、叶の意識はずっと他のところにあった。 ――洗濯機のスイッチ。付けたらどうなっていたんだろう? 本文サンプル続き https://erla.jp/UNtame/novel/906316/922504/
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