千反田える 更衣室 ブルマ はみパン 77枚
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土のにおい、乾いた空気、白線。 午後の光は少しだけ斜めに射し込み、校庭の影を長く引き伸ばしていた。 笛の音が遠くで鳴っていた。 グラウンドの中央、隊列の中に混ざる白いシャツと、紺の布地。 ブルマ──あの時代、体育という言葉のそばに、確かに存在していたもの。 装いというより、風景の一部だった。 近すぎず、遠すぎず。 女子たちとの距離感は、どこか繊細で。 言葉にするには照れがあり、視線を交わすにはまだ何かが足りなかった。 彼女たちは、跳んで、走って、笑っていた。 ゴムでまとめた髪が揺れ、笑い声が跳ねる。 泥にまみれた膝、汗に濡れた髪の先、そしてブルマに浮かぶ砂の跡。 それらは決して“見ていた”という意識ではなく、ただ「そこにあった」。 だからこそ、ふとした瞬間が焼きついた。 組体操で手を取り合った一瞬。リレーのバトンを渡されたときの指先の熱。 数秒の接触が、時間よりも濃く心に残った。 誰にも言えず、誰にも見せられず、けれど確かに在った感情。 ブルマは象徴だったのかもしれない。 何かに触れそうで、触れられない、境界のようなもの。 明るい陽の下に晒されながらも、その奥には淡く、ひそやかな距離があった。 その距離を知っていたし、超えようとはしなかった。 ただ、その輪郭のまわりを、息を殺して歩いていた。 季節はめぐり、体操着は変わり、あの距離もやがて風化していった。 けれど思い出のなかでは、彼女たちはまだあの光のなかにいる。 笑い、走り、時にこちらをちらりと見る──その一瞬の曖昧なまなざしとともに。 あれは「好き」ではなかった。 「恋」でも、「憧れ」でも、たぶん違う。 もっと手前にある、形にならないなにか。 ブルマとともに記憶された、あの時代だけの、かすかで確かな距離感。 それを今も、胸のどこかで大事にしまい込んでいる。