妖の館
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午前零時、血の門が開き、あなたは強制的に「招待」される。妖の館が耳元であなたの真名を囁く、「生き残りたければ、まず誰を裏切るか考えろ」と。社畜の清水彰隆は無人バスに連れ去られ、漆黒の館へ。祈雨村(きうむら) の呪われた雨、古宅の幽霊、灯影寺の影が次々と現れ、死のゲームが参加者をふるい落としていく。唯一の彼女と共に九死に一生の策を尽くし、彼は“妖の館”の真相―牢獄なのか、光への鍵なのか―へ迫っていく。信頼が崩壊し恐怖が心を蝕む時、彼を支える言葉はただ一つ、「誰も信じるな、鏡の中の自分さえも」。理性崩壊のカウントダウンは既に始まった。終局まで…あなたは生き残れるか?
肉に味がない
その突然の悲鳴が、別荘の死のような静寂を破った。 皆は一斉に二階へと視線を向けた。 「何があったんだ?」 「わ……分からない」 「見に行こう」 一行は素早く二階へと駆け上がり、声の方へと向かった。 それは、麻痺した老人がいる部屋だった。 先ほど食事を運んでいた雨宮が、今は床にへたり込み、壁際に寄りかかって膝を抱え、がたがたと震えていた。 湯気の立つ食事は、床一面に散らばっている。 「何があった?」 清水が尋ねた。 雨宮は皆の前で、ゆっくりと一本の指を伸ばし、ベッドに横たわる老人を指さし、震える声で言った。 「あ、あの人が……さっき、しゃべったの。」 彼女の指差す方向に、皆はベッドに横たわり、身じろぎもせず、窓の外をぼんやりと眺めている老人へと視線を移した。 柳はフンと鼻で笑った。 「なんだ、そんなことか……あの女が言ってたの聞いてなかったのか? 母親はただ麻痺しているだけだと。麻痺は植物人間じゃない。なんでしゃべっちゃいけないんだ? ずいぶん偉そうにしてると思ったら、 ただの寝たきりの老人に、そんなにビビるなんてな」 柳は絶好の機会を捉え、口を機関銃のように突っ走らせた。 しかし、隅にいる雨宮はよほど怖かったのか、ぶるぶる震えるばかりで、一言も言い返さなかった。 清水はベッドの老人を一瞥し、柳に床の片付けを手伝うよう合図すると、自分は床に座り込んでいる雨宮をぐいと引き起こした。 「あいつがこぼしたのに、なんで俺が片付けなきゃいけねえんだ、まったく」 柳は口ではぶつぶつ言っていたが、意外にも素直に、すぐさまトイレからタオルを持ってきて、床を拭き始めた。 その光景には少し違和感があった。 いかにも気難しそうな男が、清水にはこれほど従順なのだ。 しかし、皆は何も尋ねなかった。 部屋を片付け終えた後、清水は老人のベッドのそばに行き、その慈悲深い顔をじっと見つめ、布団をかけ直してから、皆と共に部屋を出た。 一階に戻ると、外はすっかり暗くなっていた。 青白い照明がホールを照らしている。 だがなぜか、皆はまだ暗闇の中にいるような気がした。 沈黙した空気が不安を煽る。 「さて、雨宮、もう話せるだろう。さっき、あの婆さんは上で何を言ったんだ?」




