イブリダ秘湯物語(BOOTH無料PDF)
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一般に「秘湯」と聞くと、人里離れた山奥にあり、辿り着くまでが困難な温泉を思い浮かべる方が多いと思います。 地図を何度も折り直し、細い道を進んだ先にようやく辿り着く――そうした場所が、秘湯と呼ばれてきました。 しかし、本書で語られる湯の物語は、その意味での秘湯ではありません。 山奥にあるかどうか、有名か無名かは、ここでは重要ではないのです。 本書でいう秘湯物語とは、秘界から見た湯の物語のことを指します。 秘界とは、未知の土地や未踏の場所を意味する言葉ではありません。 それは、世界の見え方がふと切り替わる、その一瞬の状態を指しています。 湯に身を沈めたとき、外界との境目があいまいになり、知っているはずの世界が、知らない表情を見せることがあります。 そのとき人は、いつもの場所にいながら、いつもとは違う世界に足を踏み入れています。 本書では、その状態を「秘界」と呼ぶことにしました。 この短編集には、六の異なる秘界が登場します。 どこから読んでいただいても構いません。順序も、正解もありません。 それぞれの物語が、読む方にとっての秘界への入口となれば幸いです。
