夜歩く人
- 支払いから発送までの日数:7日以内あんしんBOOTHパックで配送予定物販商品(自宅から発送)¥ 1,010

ヴァリアーって家族っぽいよね、というところからほのぼの日常系ザンスクを書いてみたいな、と思っていました。そしてふとベルちゃんって王族からヴァリアーに入ったって事は特殊環境から特殊環境に移動してるんだなぁ、ってふと思ってその二つをミックスしたお話をつくってみました。 ほんのり血の薫りがする日常系ほのぼのゆるふわザンスクです。ほのぼのなので全年齢対象ですがイチャイチャ度はたくさんアップさせてみました。 以下本文抜粋となります スクアーロはぼんやりと天井に視線を向けていた。 いつも鋭い目つきも今は柔らかい。それどころかほんの少し潤んでいた。 物思いにふけっているようにも見える。理由はベルフェゴール事だ。本当に恋をしているのだろうか。恋をしては駄目だと思っている訳ではない。変な相手じゃなければ自由にしたらいいと考えてはいるのだが……。 「ゔぁー」 変な声を上げてスクアーロは頭を掻きむしった。 「なぁ、ベルに惚れた相手がいたらどうする?」 横を向いてスクアーロは問いかけた。視線の先にいるのはザンザス。 二人はベッドに並んで寝ていた。体を重ねた後だから。 そうザンザスとスクアーロは恋人という関係なのである。自分に恋人がいる訳だからベルフェゴールだけ認めない、なんて不公平なことはするつもりはないのだが……どうしてもルッスーリアの言うように今日のベルフェゴールの状態は、恋故だという意見に気持ちが納得出来ずザンザスに話してしまったのだ。 「ハッ、何言ってやがる」 口調は呆れ気味だ。 ザンザスの反応もベルフェゴールと恋が結びつかないようだった。 「ルッスがよぉ」 ボンゴレ本部から戻り寛ぐために寄ったリビングルームでの会話の内容を話した。 「ベルが自分から今回の件に噛みたいと言ったのか」 恋の話よりザンザスはベルの積極性の方が気になるらしい。 「ああ、そうだぁ。ベルには指示を待てと言ってある」 「誰かに惚れたとは思えねぇが、それなりに強く思入れる相手はできた可能性はあるな。悪い事じゃねぇ、スシ喰いにジャッポーネに行く程度には広がったがアイツの世界はまだ狭い」 ベルフェゴールはボンゴレ雨の守護者でありスクアーロの弟子でもある山本武の実家、竹寿司が気に入り機会があれば通っているのである。ベルフェゴールは特殊な育ち方をしている、自ら王子といっているが本当に王族だ。八歳でヴァリアーに入隊しほぼヴァリアー内で育っていると言っても過言ではない。他の隊員のように一般の世界である程度の年齢まで育った訳ではなくヴァリアーの中の世界しか知らないのだ。ザンザスやスクアーロ、ルッスーリア等を親代わりに育ち暗殺の任務にも従事してきた。同年代の子供と遊んだり青春的な事はしないでここまで成長してきてしまった。ザンザスとしては今からでも屈託なく楽しむ相手ができるのは悪くないと考えているように思える。 「何でルッスは恋だと思っちまったんだろうなぁ……今のベルはそういうのとは違うように見えるんだがなぁ」 「自分の時と比べてみてか」 にやっと口元を歪めてザンザスは言った。 「クソボス……」 そう呟いたスクアーロの顔は真っ赤だった。 ザンザスがそうわざわざ言葉にしたのはスクアーロが恋心を自覚したのはもっとロマンティックだとか情緒あふれていたとかだったからではない。むしろ逆だ。恋愛に関して語れる口を持っているのかという方だ。 揶揄するようにスクアーロが言われるのには理由がある。ザンザスから向けられる恋愛感情に一切気が付かなかったからだ。そのうえ自分がザンザスに向けていた感情も恋愛だったとは暫く気が付かなかったという恋愛二重苦を背負っていた。その為ザンザスはスクアーロが気が付いて両想いになるまで相当の苦労を強いられた。 だからこその揶揄である。 「あ……あれは、アンタが俺にその……恋……するとか有り得ないって……」 更に顔を真っ赤にしてしどろもどろに言った。 あぁ……。 呻いた後、スクアーロは突然大声を上げる。 「もう終わりだぁ、俺の話は」 「うるせぇ」 すかさずザンザスに頭をはたかれた。 「恋だとは思わねぇが、少し気にはなるな」 「ベルのことかぁ」 「そうだ、様子は見ておけ」 「si」 そう返事した後スクアーロは小さくあくびをして目を閉じた。それ程時間が経たないうちに寝息が聞こえてきた。 今日の急な呼び出しやその他の業務、そしてベルフェゴールの事が重なってしまった上に体を重ねたから溜まっていた疲労が一気に出たのだろう。 肺が大きく動きスクアーロの唇から息が聞こえた。 生きてる。それを確認しザンザスは自分も目を閉じた。スクアーロは不意に命を落としかけるからつい気になってしまうのだ。 翌日、ザンザスが目覚めた時にはスクアーロはそこにいなかった。体の重みでへこんだ跡すらなくシーツは体温すら残していない。余程早くベッドを抜け出したのだろう。 はぁー。大きくため息を吐く。 本当に情緒というものが欠落している。 アレに対して恋愛感情を持ってしまったのが一生の不覚といっても過言ではない。出会った時の破天荒さを身をもって知っているから恋愛感情に気が付いた時の絶望感は半端ではなかった。他の相手だったら良かったか、というとそういう訳ではないのだが。 アプローチはことごとくスルー。それどころか自分の恋愛感情すらも見失ってしまう。だからといって諦める気にはさらさらならなかった。全て丸ごと手に入れたかった。生きるうえでその存在が自分に必要不可欠だと理解してしまったから。最初はこの世界に自分を繋ぎとめるため。次に己の力を常に高める原動力として。 ザンザスは冷たくなったシーツに手を這わせた。 ここにスクアーロが存在していた形跡はまったく無くなっている。スクアーロは今日から三日間部下を連れて遠出して任務だ。同盟ファミリーからの依頼で構成員の一人が裏切って敵対ファミリーと手を結んだという。構成員と敵対ファミリーの幹部の暗殺依頼だった。 任務中顔も見られず声も聞けない、当たり前だが。 だからこそ出かける前に一言あってもいいのではないだろうか、このベッドに居る時は恋人なのだから。 最初の頃は任務を終えて戻ってきた時に任務出発までに起こして声をかけないのか、と文句を言ったが一回として実行された事はなかった。隣でスクアーロがもぞもぞ動くからザンザスが自発的に目を覚ます事はある。そんな時はスクアーロは『行ってくるぜぇ』と声を掛けていたが。 自分がスクアーロに対して欲深い事をザンザスは自覚していた。生きてきた人生で手の中から失われる事ばかりだったから、一度手に入れたものは二度と失いたくないのだ。何度も失いかけたからこそ余計に。 「カスが」 一言シーツに向かってこぼすと起き上がった。
