














四季折々の花が行く先を指し示すように咲きこぼれる、ひとけのない坂道をのぼった先。かつてとある華族の私有地だったという小高い丘、生い茂る木々に隠された鉄の門扉の向こうにあるのは、全寮制の女学校――七尾つばめ女学苑。 表向きは良家の子女が通う学苑には、まことしやかに囁かれる噂があった。曰く、 ――少女たちには、不思議な力があるという。 これは明治時代から現代に至るまでの、学苑を取り巻く、物語の断片。公の記録には記されない、取り残された思い出たち。 ・「捕らえ、捕らわれて」大正(七木) 陸軍の密命を受けた美貌の軍人、倉橋隆章は、生徒たちの異能を探るべく教師として学苑に潜入する。生徒たちの信頼は着実に得られていくが、同僚の教師、都筑小夜子だけには嫌われていて…… ・「あなたが少女だった季節」昭和中期(神尾) 浮かれると文字通り身体が浮き上がってしまう相沢ことこは、孤独で謎めいたクラスメイト、深見ゆうとひょんなことからお近づきになる。だが、「深見さん」にはとんでもない秘密が隠されていて…… ・「最後に、ひとつだけ」昭和前期(七木) 願いごとを叶える力と引き換えに身体を蝕まれながら、雛子は戦時下の軍に徴兵志願する。命を削りながら予知を続ける彼女には、誰にも明かせない、たった一つの望みがあった…… ・「どうか一緒に食卓を」令和(神尾) 自分を巡る女性たちの喧嘩を止めた少女に、一目惚れしてしまった早乙女清春。自他共に認めるクズ男の彼は、少女に再会するために全寮制の女学校へ侵入を試みるが……何やらその女学校には不穏な噂があって…… ・「あなたに優しい祝福をあげる」大正(七木) みどりには青い屋根の家に住む、素敵な祖母がいる。ある日祖母に語られたのは、花を咲かせる力を持った孤独な伯爵令嬢と、彼女に手を差し伸べた一人の少女の物語だった。 ・「ずっとお城で眠ってる」明治中期(神尾) 他人のこころに触れることができる男爵令嬢、七尾千代。ある日、感情を失った「人形少女」のつばめを与えられた彼女は、そのこころで思うがまま遊び始める。しかし、お人形のはずのつばめが、千代の知らない顔を見せて……。学苑の創立前夜のお話。 B6・156頁 ※文学フリマ東京39で出した準備号に新たに四篇を追加した、完全版です。 初回販売は文学フリマ東京42です。 こちらは手数料込みの通販価格です。














