【新刊セット】おまけ本2冊付き
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☆新刊 「近づけば青は透き通る」 キララク中心オールキャラ本 140ページ 「Miseria」 アコード姫パロ 40ページ ゆうさんに描いていただいたポメキララクしおり付き ☆おまけ本 2冊 「わんとおてがみ」 わんでき おまけ話、おまけしおりのポメ話、心が駄々洩れキラの話(貴族パロ)14ページ 「空より青く」 カレッジ組と花まつりの話 22ページ イベントでお付けしたコピー本はPrivatter+でもお読みいただけます。 PDFは購入者限定特典です。転載は禁止・再配布禁止です。 「うどんを君と食べたい」 短編2本 12ページ 「お姫様の話」 短編3本 12ページ 新刊セットはおまけで、わんとおてがみのプロローグの短編お付けしてます。
近づけば青は透き通る
「俺はいきます」 「そうですか」 目の前に広がる暗い宇宙から隣に立つ人を見た。 いつか迎える 何事も起こらなければ、このままずっと隣に立ち続けると思っていた。身体から重さの責任を消した無重力に、支える手すりに手を置いたまま体をアスランに向ける。 ラクスとアスランは久しぶりにゆっくりと話すと、お互いやつれているが、終戦の穏やかさを少しだけ感じる。 父を亡くし、反逆者となり。 同じように、別の人に恋をした。 役割に縛られた関係が終わる。 始まりの色を見せ始めているように、二人の道は分かれる。 ラクスは美しく成長し、アスランも端麗に成長していた。 共に過ごした日々は時間にすれば短く、恋にはならなかった。 特別ではあるが、別の感情だった。アスランにはそれがまだわからない。 あっさりと切れてなくなってしまうほど儚い関係ではないはずだ。 家族にも、恋人にも、なれなかった。 「改めてなんですが」 「はい」 「婚約を破棄しましょう」 「はい」 ラクスはにっこりと受け入れ、口にしたアスランも笑う。 周りに決められた婚約、婚約破棄も決められたもの。 何もかも失った者同士、自分たちの意思で終わらせるようにアスランは頭を下げた。 「今まで、ありがとうございました」 「ありがとう、アスラン。一時でもご一緒できて楽しかったですわ」 ラクスはアスランの下げられた頭を見ながら、ふふっと破棄されたとは思えない気軽さで手を差し出した。 お茶会の後と同じように。 長い婚約期間は破棄という終わりを告げた。 「では、お友達になりましょう」 「え……友人ではなかったのですか?」 「あら……」 ラクスの発言に驚いたまま華奢な手から彼女の顔を見る。 人形のように感じていたミルク色の肌に、空色の瞳はアスランに変わらず微笑みかけている。 「俺は友人だと……」 「まぁ……アスラン。私のことお嫌いだと思っていましたわ……厳しいことも申しましたし」 「自覚あったのか……」 ラクスはさらりと言うと、今度は鈴を鳴らすように笑い、桜色の髪を揺らす。 初めて出会った時のような、ピンクの妖精は戦艦の中でも変わらずに漂う。 可愛いとは思った、自分には勿体ないくらいの良縁であり役割だと。 母を愛していたくせに、子供を政治の道具にした父。 憎悪に焼かれ、憎しみを抱いた、多くの憎しみを生み出した復讐者のまま父は逝ってしまった。 未だに残る思想は父を殺さないだろう。 キラを撃つと決めた自分には、それでも父を憎みきれずに、許すことも出来ずにいる。 「きみこそ、憎くないのか? 俺が」 「アスランが……ですか?」 きょとんとラクスはアスランを見つめ、口を開いた。 「アスランは、アスランです。それに、誰しも恨まれることも憎まれることもしていますわ。 戦争ですもの」 優雅な彼女はそう言うとやはり良きパートナーにはなっただろうと思う。 それでもアスランには、日に焼けて、ぶつかり合うように感情をくれるカガリが好きだと思ってしまう。 「ラクス、俺はきみのこと好ましいと思っていた」 「嘘です」 アスランが言うと、無邪気に水を掛ける様にラクスは返す。笑顔から真顔に変わったラクスにアスランは思わず後退する。 上手くやっていると思っていたのは、やはり自分だけだ。 「……めんどうとも、意味が分からないとも思っていたが。 俺……も、きみを憎むことはない。 それに、君と恋もしない。 それでも君を守りたいとも思っている」 抱く好意はラクスに向けるものと、カガリに向ける思いは違う。 アスランにとってもう触れたいと側にいるべきと思うのはカガリだ。 それでも彼女は、大切な人であることは変わらない。 キラが敵になったときと同じように。 敵でも、撃たなければいけない存在であっても彼は大切な友人だ。 「私は共に戦い、平和にしたいです。 あなたとなら作れたかもしれません。 でも、そこに幸せはあるのでしょうか? あなたと恋はできません」 仕返しとばかりに告げた。 ラクスも仲良くなろうと努力した。 愛情には種類がある、燃えるような恋をするだけが愛情ではないと言い聞かせ。 クラインのため、プラントのためと。 アスランは容姿端麗でザラ家の嫡男、羨望と嫉妬の目を向けられることもあった。 ラクスは誰かの恋を潰して、これから彼の隣に立つのだと覚悟を決めた。 摘み取ってしまった想いの代わりに。 本当は恋をしたかもしれない。 アスランのことを心から愛する誰かの代わりに。 「本当に好きな人に。 あなたが出会えてよかったですわ。 この先、幸せなことも……辛く、苦しいこと。 きっと名前も、今まで手に入れていたもの、全てがあなたを苦しめます……。 それでも、あなたには愛する人がいることを忘れないでください」 「それでも、カガリといく。君はどうする?」 「わたくし……?」 ラクスはアスランの言葉にまた深く慈愛の微笑みを浮かべていたのに、自分のことになるとふっと影を落とす。 アスランはそれが苛立ってしまう。 まるで、自分の意志は許されない。 欲しいものは何もない。 望んではいけない。 ラクス・クラインはそうあるべきだと。 「一緒にいこうか?」 「いいえ、それはいけませんわ」 当たり前のようにアスランのことはあっさりと答えてしまう。 きっぱりと公務に対しての扱い。 キラの前のように、ラクスは泣かない。 アスランの前ではラクスは、ラクス・クラインであろうとする。 アスランはカガリと共にオーブ、地球に降りると決め。 同じく、プラントにも居場所のない反逆者同士という咎を背負うことになった。 元婚約者は、宇宙に残り平和のために戦い続けると決めている。 ラクス一人くらい守れると思う。自惚れた気持ちを咎め、役割を見失うことのないように微笑む。 「私は大丈夫です」 「大丈夫じゃない……」 「まぁ……アスランどうなさったのですか?」 「心配したらいけないのか?」 「……あらあら……。それは、キラとカガリさんにしてくださいな」 「キラは、君と残ると」 「……え…」 「あいつは、泣き虫で、甘えるのが上手いから。一緒に居たほうがいい」 キラの名前を出した途端、彼女は公私との切り替えが出来ずに揺れ動いた。 泣きそうに顔を歪ませ。分かるくらい顔色を変えてしまうとすっと表情を消して考え込んでしまう。 アスランの前に見せた小さな弱さを消し去るように息を吸った。 「本当は……」 ラクスの声が重く落ちる。 「キラの……パイロットが必要です。世界はまだ混乱して、ザフトでも地球軍でもない。どこにも属さないものが必要です」 「そのために、キラが必要だと?」 「そう……です。それでも……今のキラには守るべきものはありません。だから……」 「キラは、君を守るために残るぞ」 「……そんな……ことは、あってはいけません」 ぐっと白くなった指先が、掴む先を探すように動くと足が崩れそうに震えている。 キラを連れて行って欲しいと、キラを守ってほしいというだろうか。 ラクスは恋も捨てるのか。 「キラはきみの側にいる」 アスランが、当然のことと言い放つと笑った。 初めて見る顔にラクスは目を丸くした後、自分の知らないキラを知っていると言われたように、むっと頬を膨らませる。 アスランも初めて見るラクスの顔に笑いを堪えている。 「……どういう意味でしょうか?」 「さぁ……これから、キラと知っていけばいいさ……」 「アスランは……人の恋路には、察しが良いのですね」 「それは……。そうだな……お前たちだけだ。わかりやすいからな」 「カガリさんを泣かせたら、ハロちゃん攻撃だけでは許しませんわ」 「そうだな。君といる時よりは本気でいくよ」 「……まぁ、元婚約者とは思えませんわ……」 「先に、友情を疑われたのは俺だぞ」 「ふふ、では。お友達認定ですわ」 「どうも」 「さよなら、ラクス・クライン」 「さよなら、アスラン・ザラ」 これからは、お友達として挨拶をしようと、二人は一つ役割を捨てた。 「ピンクちゃんたちは返さなくていいですよね」 「返されても困る。きみの友達だろ」 ペットロボットに対して、淡々としていたアスランからの言葉にラクスは思わずアスランの顔を見た。 クライン邸の給仕ロボット、オカピに対しても彼はいろいろ言ったが優しかったと、ラクスは微笑む。 それはキラもラクスも、アスランの作ったペットロボットを大切に愛でてくれているからだと。 いつか話せる日が来る。 今ではない、もう少し未来の話。 「友情の証にしてくれ」 「わかりました、お友達のアスラン。 またお会いしましょう」
Miseria
「ここには、誰も来ませんから」 あの時感じた、満開に咲く薔薇の香り、彼女の空気が夢のように思える。 彼女の薔薇が燃えている。爛れ、灰になっていく。 月明かりに照らされた彼女の顔、声ももう聞こえない。 敵陣の利用すべき存在。 短い逢瀬の中で、キラは彼女を深く知ってしまった。 まだ世界の悲しみも、醜さも知らない。残酷さも何も知らない。 純粋と片づければ済む話。 血に塗れたキラを知れば。 キラを蔑み、愛し、憎悪するだろう。 そして、戦えというだろう。 それだけの力を持ち、できるのだから。 彼女の庭は、薔薇の香りに、包まれ天国のように感じる。 色とりどりの品種も、香りも違う薔薇は、夜も眠らずその花びらを開き二人を迎える。 月明かりと星だけの庭は、しっとりと、冷たくキラの頬を撫でた。 小さな灯りを持った彼女をキラは見失わないように追いかける。 「目も耳もいいのですよ」と、彼女は楽しそうに薔薇のアーチを抜ける。 花以外は何もない。機械も電気もない。未だ蝋燭が揺れる光はキラを誘う。 宇宙に放り出されたように孤独な場所だと、キラは思った。 甘い薔薇の香りが肺に満ちた。 キラはその幻想を追うように、足を動かした。 彼女は唯一持っている美しい庭をキラに見せたいと言う。 現代の光に慣れたキラには、「いくらコーディネイターでも、暗く見えない」と冷たく言った。 「あなたには見えても、私には見えないものがあるのですよ。その逆も」 はっきりと事実を伝える声は、鋭さを隠していた。 ざわざわと木々のざわめきがキラの耳に響く。暗闇の中で、音に敏感になった。 優しく油断させなければいけないのに、彼女にはそれすらも忘れさせる。 関わりたくない。それでも離れられないでいる。 気が付けば、無意識に彼女を試す行動を繰り返していた。 「まあ、そうでしたか」と、彼女は何でもないことのように言う。 そして、「少し失礼します」とキラの手を取った。 キラの手袋越しに感じる体温が彼女を人間だと思わせる。 ちりっと何かが入り込んだ違和感に視界が一瞬歪んだ。 不快感はないが、何かが包み込まれた感触がある。 あたたかい毛布のようだ。 甘い香りも好ましく、ゆっくりと瞬きをキラはした。 次に目を開けると、自分の姿が見えた。 低くなった視界に、色までも鮮明だ。 「同じですわ」 彼女は言うと自分の瞳を指さした。 彼女の視界を共有しているのだと、その一瞬でわかった。 自分の姿が鏡のように見えた。 彼女の映す自分。 それはキラには、冷たく醜い化け物に思える。 「化け物」と自分に対して漏れた言葉に、ラクスは「ふふ」と小さく笑って手を引いた。 冷たい指先がキラの手首に触れ、手袋に包まれた手のひらを撫で離れる。 ほんの僅かの肌の触れ合いに、思わずキラが手首を引き寄せて確認した。 いつもある不快感がない。それどころか、触れたいとすら、一瞬思った。 力を見せても、彼女は無邪気に「こちらですわ。見頃のお花がありますの」と言った。 月明かりの中を二人で歩くと、彼女が歩いた道がぼんやりと光って見えた。 そんな筈はないと、すっと追い越すように彼女の隣を歩いた。 白に紫のスカートがふわふわと揺れている。 幼馴染と別れた日に咲いていた桜のように、ふわりと彼女の髪が広がって夢の中に連れていかれるようにも感じた。 ゆらゆらとまるで眠気のような空気に、ぼんやりと彼女を見つめていた。 白いフリルに包まれたままの指先が動いた。 彼女の手の先に、薄紫の薔薇が咲いていた。 彼女とリンクしているせいか、それは今まで見た花の中で、一番美しく思えた。 彼女が口づけるように顔を寄せると、キラにまでその香りが共有される。 「この薔薇は、あなたに似てますわね」と透き通った声は彼女のものか、キラのものか曖昧に感じた。 一番美しいと思った花が、一瞬にしてその座を奪われた。 一瞬だけ彼女の感情が見えた。彼女自身も驚いたように、すぐに月影に消えてしまった。微かな変化を恥じて、僅かな声色の変化を誤魔化すように、完璧な音楽のように彼女は話した。 「特別なお花」 キラにではなく、自分に話しかけていた。 屈託なく。 〝ただ似ているだけで──〟 キラは自分の中で、小さく灯った気持ちを握り消した。 そう笑う彼女だけは偽りなく、そこに残る。 それでも手を伸ばす先に僕はいない。 手を伸ばす。 春風に少し触れた気がした。 忘れていた穏やかな時間がキラの中に蘇ってきた。 夜風は二人を包んで、まるで世界に取り残されたように感じた。 彼女のドレスが舞い上がり、それに誘われるように、キラの軍服とマントも同じように揺れた。 舞う服だけが一緒に踊っていた。 彼女の瞳に映すキラが見える。 キラには、彼女が見えなくなった。 紫と白のドレスは、初めて会った時よりも、年相応に見せてた。 菫の花のようにフリルが広がって、ふわふわと風に乗って消えてしまいそうだった。 そう感じて、キラは頭を振った。 いなくなるのは、キラの方だ。 ここは彼女の箱庭。彼女は、キラがいなくなったあともこの箱庭で一人この薔薇を愛でる。 柵に囲まれた箱庭は、額縁の中のようにキラと彼女を隔てた。 キラは、彼女に触れることも、助けることもしない。 笑わせることも、怒ることも、諭すことも。 役目が終われば、消える。 それだけのはずだ。 彼女にとって、僕はなんだろう。 そう、自分の中に生まれた問いかけ。 初めて、そう心が僅かに軋んだ。

