SFBLアンソロジー
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10,000文字✕10人の個性! SFBLに特化したアンソロジーになります! 文学フリマ大阪14の新刊です。 ※サンプル※ 「機械仕掛けの心臓」 金色のジャンパーから腕を伸ばし、俺は滴り落ちる雨をその掌に受けた。 ──灰色の空から降ってくるってのに、雨は透明なんだな。 「その腕、生身かい?」 しゃがれた声が傍らからかけられる。薄汚れた毛布が積んであると思っていたそれは、腰の曲がった老婆だった。 「ここらじゃ珍しいねぇ……どうだい片腕2万で。仲介料はいらないよ、工場(こうば)はすぐその裏だ」 「……申し訳ないが、俺はこの両腕を気に入ってる。売るつもりはない」 「おや、声帯も生かえ。もしや全身……? フルオーガニックかえ?」 「そうだと言ったら?」 「一儲けできるってのにさ。勿体ないよ……」 俺は物欲しそうな目をした老婆から離れて、向かいの店の軒先に移った。 ここには三種類の人間がいる。俺のような生身の人間、身体のどこかを機械にした人間、身体全てを機械にした……人間じゃなくロボットか。このスラムじゃどうでもいいことだけどな。 雨の向こうにチカリと遠くの白い光が見えて、俺はそちらを見上げる。 スラムを見下ろすように立っている、A等級人間の城。 その裾野にはスラムが広がっている。ここには法律も規則も何もない、ただ飯を喰って眠るだけの獣に似た人間しかいない。 それでも中には城に入ってみようとあがく奴もいる。城に入れさえすれば等級が上がったとみなされ、城での生活を許されるとかなんとかという噂。 「城に入るの挑戦した奴いたっけ」 俺は泥水よりはマシ程度の薄いレモネードを飲みながら、隣に座った見知らぬ男に声を掛ける。 「三年ほど前に登ったって奴が居たそうだが、帰ってきた噂も気かねぇから殺されでもしたんだろ」 「……まあ、そうだろうな」 「なに、城目指してんの?」 「そういう訳でもねぇけど、泥水すするのも飽きたしな」 話していた男がふらりと去っていく。

