ニコール 01号 (アートZINE)
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ニコールってなに? 「ニコール」は、絵描き・今井陽子(おこちゃん)が発行するアート・ミニコミ(ZINE)です。 名前の由来は The Velvet Underground の Nico。 ニコール01号 読み方ガイド ―どこから読んでも、いいんです。 仲間と一年かけて、アートZINE「ニコール」創刊1号をつくりました。 編集長は、おこちゃん(今井陽子)。看板娘は、にこちゃん。制作は、創刊0号から編集長が頼りにしている、まっさん。僕は企画として、毎週のZoom編集会議で、ひたすら相槌と合いの手を打っていました(苦笑) まず編集会議自体が、とにかく面白かった。その印象が残ります。 この面白さを伝えるために、何を伝えられるかなぁ…?誌面をとった人、これから読む人に向けての 正直に言うと、初めて手に取った人は「?」となるかもしれません。その理由は、宣言文、詩、サイケデリック文化史、展覧会レポート、フェミニズム論、名画の顔ハメ、AIで生成した表紙。全部が同じ熱量で並んでいるから。おそらくそんな印象でしょう。 でも、背骨は一本です。 アートを、「見るもの」から「生きること」へ。 そこで、読み方の案内をつくりました。記事を4つの入口に分けています。最初から順に読む必要はありません。 【4つの入口】 ・遊ぶアート……名画de顔ハメ(p26)、アートなヲレ(p18) ・感じるアート……創刊のことのは(p1)、にこちゃんのページ(p4)、アボリジナルアート(p22)、表紙生成の話(p32) ・生きるアート……女性アーティスト展(p20)、アンチ・アクション(p24)、飛ぶお絵描き部屋・蜃気楼専門学校(p34) ・受け継ぐアート……Bill Ham追悼特集(p10)、生成と持続(p30)、存在とID(p31) 迷ったら、まずp26から。 【遊ぶアート】 名画de顔ハメ(p26〜29) まず何点わかるか、数えてみてください。 ゴッホの「星月夜」、北斎の波、フェルメールの少女、草間彌生のかぼちゃ。37点の名画を段ボールに描き直し、顔の穴から同じ女性がこちらを見ています。絵画教室「育てる絵画プロジェクト」の井上ゆかりさんによる作品で、名画当てクイズ付きです。 名画は「拝むもの」ではなく「遊べるもの」。ニコールが言う「生きるアート」の、光がここにあります。自由さと面白さは人間のもつ「光」です。 アートなヲレ(を体現し)、素敵なヲレ(に成りたい)(p18〜19) 大人こそ、美術館に行こう。 「気が付けば美術館にハマっていた男の手記」。荻窪ゴンザリオンさんが、はけの森美術館、府中美術館、東京オペラシティアートギャラリーを巡ったレポートです。展示の感想と、帰りのカフェや焼き鳥の話が同じ熱量で並びます。 小学校の遠足以来、美術館に行っていない大人へのラブレター。知識より「年季の入った舌」で味わう楽しみ方が、そっと背中を押してくれます。 【感じるアート】 ■創刊のことのは(p1) 上手く描くためではなく、もう一度自分と出会うために。 「ニコールはじまります。」編集長おこちゃんの宣言文です。権威に向かう登竜門ではなく、自分だけのgateへ。かなぐり捨てたら、なんか出た。そして「人は創る生き物だ」と言い切り、そこに「にこちゃん登場」と続きます。偶然の出会いから誌名と看板娘が重なった、この雑誌の始まりそのものが書かれたページです。 にこちゃんのページ(p4〜9) 言葉になる前の感覚を、写真と詩で。 夕日、海辺の燃える流木、木漏れ日、紅葉。にこちゃん自身が撮った写真に、詩「平和は愛の循環」「水と愛」が重なります。エッセイ「白い天上と水玉の間」では、同郷・松本で身近だった草間彌生の作品に、言葉より先に温かさを感じていたこと、そして草間さんも生きるために描いていたと知り、勇気をもらったことが綴られます。 アートの魅力は技巧より、作品を通して「その人そのもの」に惹かれること。読み終えると、作品を見る目が少し変わります。そして、にこちゃんの実感のこもった言葉の強さと潔さが、アートZINE「ニコール」を彩っています。 彼女たちのアボリジナルアート(p22〜23) 生活に真剣に向き合うこと。それだけが、命を描く。アビーさんの貴重な体験を綴った短文があり、 そしてー アーティゾン美術館「彼女たちのアボリジナル・アート」展のレポート。okaki5959さんは、ヤマネコを捕らえ、焼いて食べる映像に「生活そのもの」を見ます。北海道で見たアイヌの文様の記憶とつながり、自らも「生活」という文字を繰り返し書く作品で応答しています。(名文!一読の価値あり) 誌面の「SEIKATSU」からどうか「命」を感じてください。 創刊一号 表紙生成の話(p32〜33) この表紙、3人の作品とAIの共作です。 表紙の絵は、三澤史枝さん、落合美幸さん、空海ちゃんの3作品を、橘川幸夫、生成AI「シビル」とのやりとりで溶かし合わせて生まれました。タイトルは「乱反射する認識」。都市の線、有機の線、抽象の滲み、偶然の色が互いに侵入し、街の形が植物の内部に見えてきます。 表紙を見てからこのページを読み、もう一度表紙に戻ると、まったく違う絵に見えるはずです。 【生きるアート】 2025年からの怒涛の女性アーティスト展(p20〜21) いつの時代も、女性たちは描き続けていた。 2025年1月、MAYA MAXXの訃報。面識はなくとも、ラジオの録音を49日間聴き続けたおこちゃんの追悼から始まります。続いて東京国立近代美術館の「ヒルマ・アフ・クリント展」。娘さんと二人、気に入った絵の前から何十分も動けなかった時間が描かれます。 展覧会の紹介ではなく、ひとりの絵描きが「なぜ生きているうちに会えなかったのか」と自分に問う記録です。 アンチ・アクション(p24〜25) 歴史から姿を消した女性たちは、何を描き、なぜ描くのをやめたのか。 東京国立近代美術館「アンチ・アクション 彼女たちそれぞれの応答と挑戦」展をめぐる2本立て。空海ちゃんと生成AI「えむみ」による私見「被害者でいないという選択」は、怒りを武器にも資本にもせず、静かに引き受けるフェミニズムを語ります。おこちゃんは、白髪富士子が手で裂いた和紙を元の形に繋ぎ合わせた白い作品「無題」に心を奪われ、制作を離れて夫の支えに徹した彼女の後半生を思います。 戦後美術史から消えた女性画家たちを入口に、「怒り」の扱い方そのものを問う、この号でいちばん骨太な見開きです。 飛ぶお絵描き部屋・蜃気楼専門学校(p34〜35) 考えすぎちゃう大人へ。絵の具と遊ぶと、知らなかった自分と出会えます。 おこちゃん自身が開く「リアル体験の場」の紹介です。飛ぶお絵描き部屋は横浜・東久留米で月1回。思考をお休みして絵の具と遊ぶ、身体優位のマインドフル体験です。蜃気楼専門学校は春と秋の年2回、座学と自然にまみれる一泊合宿。 【受け継ぐアート】 FREEDAMN 伊藤公彦の凸凹米国在住記/Bill Ham追悼特集(p10〜17) サイケデリックの「光の神様」は、日本の浮世絵を愛した人だった。 1987年、藝大デザイン科を出てサンフランシスコへ渡った伊藤公彦さん。訪ねた家で、ビールの小瓶を手にした長髭の老人と出会います。それが1960年代サイケデリック・ムーブメントの伝説的ライトショー・アーティスト、Bill Ham(1932〜2025)でした。伊藤さんは彼のアシスタントになり、光と色と音楽で描く「リキッドライトショー」を共にします。 ジャニス・ジョプリンやグレイトフル・デッドの時代を生きた人の素顔が、弟子の目線で語られます。「one time, one chance」。二度と同じものはできない表現を、どう次へ手渡すかの物語です。 生成と持続(p30) 25年前の自分の言葉と、今が「生成」でつながった。 おこちゃんが、映像と音を交錯させる「イメージシンセサイザー」を生んだ坂本正治さんの話を初めて聞いたのは、コロナ禍の2021年。そして先日、部屋の片付け中に、2000年の初個展の挨拶文が床に落ちていました。読み返すと、25年後の今とまったく同じことを願っていた。完成ではなく、未完成のまま共に生成していくこと。 昭和の映像実験と令和のAIが、一本の線で結ばれていきます。この号の隠れた主役と言っていい見開きです。 存在とID 坂本正治のメッセージ(p31) 名で呼ばれなかった時代に帰れ。半世紀前のニューヨークから届いた問い。 坂本さんの著書『ニューヨーク武芸帖』からの一節です。あなたはいったい誰なのだ?と、マンハッタンの言語と種族の中で問いかけます。師匠も弟子も、工も芸も、名で呼ばれなかった時代に帰れ。さもなければ、永遠に自由ではない。 編集後記で、にこちゃんがニューヨークから綴った言葉と響き合います。50年近い時を隔てて、同じ街で同じ問いに向き合った二人を、見比べてみてください。 ニューヨーク武芸帳 (1976年) amzn.asia 5,984円 (2026年10月01日 16:20時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する ご案内 ニコールは、アートが「見るもの」から「生きること」へ開いていく場でありたいと思っています。 2号の投稿も募集しています。展覧会レポート、私の絵画体験、こんなもの創ってみた、など内容は自由です。 mail@yoko-i.com アートZINE「ニコール」創刊1号 定価800円(税込)
