
物語への憧憬から十年。ぼくたちは拾い続けてきた――。 〈十〉をめぐる、十編のSF・幻想短編小説。 文学フリマ大阪14、文学フリマ東京43にて頒布。302ページ。
収録作品
01 「第十工場」 鴻上怜 All You Need Is Work 02 「FFT最強攻略記 ~真実への道〜」 笠陽庵キョウ 二十年振りに帰った実家。死んだ父の部屋で見つけたのは、ぼくが高校生のときに書いた、ファイナルファンタジータクティクスのプレイ日記だった。さあ、ぼくと共に“真実”を探究する旅へ出かけよう——。 03 「十月十日とあと十日」 笹幡みなみ 内言から「十日後にセックスの可能性がある」との予持を受け取った俺は、もともと妻とのセックスレスを特に問題だとは思っていなかったはずなのに、突然自分の欲望に気づき、妻への告白と拒絶の恐怖の間で十日間懊悩する。 04 「一から十まで」 閏水叶 一(イチ)から十(ジフ)まで [句](十を数の限りとして)何から何まで。すべて。何でもかんでも。もれなく。一つ残らず。余すことなく。ぴんからきりまで。森羅万象。ウニヴェルシタス。「一から十まで説明を加える」 05 「徒歩十分」 石井僚一 まるで目的地に辿り着かない10分間(10年間?)の散歩がここにある。 06 「彼女は確かに話している」 皆月蒼葉 その声を聞いた誰もが、彼女は美しい歌を歌っていると思った。しかし彼女は歌っていない――話しているのだ。あらゆる言葉、あらゆる文章が音楽となる人工言語を、唯一の母語として育てられた少女。しかし言語制作者は著作権を盾に、彼女から言語を奪い去ってしまう。映画「彼女は確かに話している」――本作は複数の証言者の声によって象られる、言語を失った少女の記録である。 07 「ぬるいまま」 小林貫 こんな日だからこそ銭湯に来た。湯はぬるい。明日のことは考えなくていい。 08 「とおぼえ」 murashit だらだらの坂で、来る時は気がつかなかったが、登りになると相当に長い。両側に家のあかりはないけれど、崖ではない。足許の薄明かりは何処から射して来るのか解らない。何だかわけもなく、こわくなって来た。 09 「I/O Odyssey」 Garanhead 巡る銀河の裾から眺めれば、星々の明滅も文明の興亡も、繰り返される神話であった。ここも誰かが残した宇宙なのだとしたら、果たして、あの時、布団から出て抗う意味はあったのか。少年は父の遺した機動兵器を操り、特異点を目指す悪魔と対峙する。苦闘の先にあるのは約束の地か、未知の神話か。 10 「九を失する」 cydonianbanana 撮ることは、撮れなかったすべてを失うこと。一日十枚の縛りを課した三月の朝、没にしたはずの小説が、僕の現実へ静かに侵入してくる。写真と小説の境をさまよう空白地帯の手記。
