[C96新刊]潮騒に惹かれて出逢う百合の話
- 800 JPY
■がんばる理由を探すJKと、気持ちのありかを探すJDの百合です。 「人と人が出逢うとき」、気持ちのバックグラウンドってどんなんだろうか。何を求めて、何に悩んで、何を見て、何を感じて、そこに百合が生まれるのか。なぜ彼女と彼女は惹かれたのか、という部分にフォーカスをあてた物語です。 物語の舞台は、神奈川県、三浦半島の先端の漁港「三崎港」。 心の中から響くざわめきに呼ばれるように、二人の少女が出会います。 ■内容 ・百合編 陽光の彼方へ これは勇気の話。高校一年に上がった春、何かへの情熱を持てないまま日々を過ごそうとする「わたし」は、少女の幻をきっかけに、自分にとっての大切なものを探す一歩を踏み出す。 ・春編 私が羊になった理由(わけ) これは逃避と自立の話。大学一年の春、順調な大学生活を始めたかに思われた「私」は人間関係のギャップに直面し、自分の世界を求めて走り出す。 ■成分表 ・いちゃいちゃ ■■□□□ ・風景・世界観 ■■■■□ ・ファンタジー ■■□□□ ・はごたえ ■■□□□ ■普段は東方Projectで絵本を描いていますが、文章も強化したいと思い、小説に挑戦しました! 小説を何年も書いている友人らにアドバイスをもらいながら一生懸命書きました(*'ω'*) ■紙 ・表紙…暖かみのある手触りの「ヴァンヌーボホワイト紙」。ざらざらしたマットな質感で、表紙イラストもきれいに見えますよ! おすすめです。好き。 ・本文…文字が読みやすくてめくりやすい、上質紙90kgを採用しました。文章の游ゴシックと併せて、ゆったり落ち着いて楽しく読めると思います! ■サイズ:A5版、5mmくらいです。 ■ページ数:50ページ(27000文字くらい)
私が羊になった理由・冒頭
例年よりも少し早めに開花した桜から沸き立っていた春の香りは、まだ五月にもなっていないというのに、気の早い陽射しの匂いへと変わっていった。 無事に一般入試に合格し、この都内ど真ん中の大学に入学してから一か月。友人が少ないという点に目をつぶれば、私、大島春香の大学生活は堅実かつ順調に進行していた。 旧校舎の最上階の一番はずれは、朝の陽射しの中でも、夏の夜の校舎の匂いに包まれている。リズムよく響く私の靴音が止まる。深呼吸。期待と興奮と埃と星の光を集めた匂いが私の胸をゆっくりと満たし、身体にしみわたっていくようだ。廊下には六十年分の夏が降り積もっているのかもしれない。
抜粋
背中に突然やわらかいぬくもりを感じた。椎のやわらかくて甘い香り。ゆっくりと腰に回される腕。 ねえ、春香。 「私と──」 背中から抱きしめられた。包み込むような安心感がじんわりと広がっていく。 「ね、春香なら大丈夫だよ。私は春香がすごく大事なことしてるって知ってるし、何かあってもまもってあげるよ。」 椎が額と頬を摺り寄せてくる。肩から切ない感覚が椎の香りと一緒にしみ込んでくる。