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サイズ:A5 形 体:コピー 頁 数:24頁(表紙込) 発行日:2025.12.31 C107、冬コミにて発行の新刊の表紙です。 今回は土方さん本。はじめさんはほとんど出てきません。 春夏秋冬、それぞれの季節に、あったかもしれない情景を切り取ったお話。 タイトルの『滴丁東』は風鈴の異名です。ていちんとん。
滴丁東
滴丁東。 軒先に吊られた風鈴に息を吹きかける。うだるような暑さで蝉の音ばかりがそこら中から殴りつけてきて、頭がおかしくなりそうだ。首に巻いた手拭いはとっくのとおにびしょびしょで、もう何度絞ったかしれない。 陽が傾いてくると庭の木陰が掛かってくる縁側に長々と伸びるように寝転がっても、畳の上よりはマシだという程度で、それでも風でも吹かない限りはやっぱり暑い。 「猫はね、毛が生えてるから私達よりずっと暑いんだ。だから夏、猫の居るところを探して ご覧。うちの中で一番涼しい処の筈だよ」 大兄は盲目な分、肌感覚が鋭い。耳も良いから、そぉっと近づいてもいつもばれる。いつも穏やかに笑って、手招きして、膝胡坐の中にぽすんと入り込めば、緩く頭を撫でてくれる、この兄の事は好きだった。逢ったこともない父を、重ねていたのかもしれない。 「でもあいつ、俺が寝てるとくっついてくるんだ」 自分が物心ついた時から居る老猫はもう鼠を取ることもなく、ただただ一日中、どこかで寝ている。縁側でも厨でも畑でも縁の下でも見かけたものだけれど、ここしばらくはずっと縁側にいる。しっぽが二つに分かれそうなそんな気がしていたけれど、その前にきっと、居なくなってしまうのだろう。あいつの親や、兄弟の様に。 「歳三の体温の方が低いからだろうね。とらももう歳だ。暑くても我慢して、やさしくしておやり」
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