ろくでなしの神様
- Digital500 JPY

「あんまり抵抗すると大声上げちゃうから。嫌でしょ、パトカー乗るの」 指先一本で私のことをどうとでもしてしまうひとがいる。道端に転がった小石を足で遊ぶかのように、ほんの少しの気まぐれで私の何もかもを決めてしまう男がいる。 青年のモラトリアムを破壊することができるのは少女のロマンチシズムだけなのだ。信仰する神様って殺さなきゃ。だって私、神様なんかに恋をしたんだもの。そんなお話です。 文字数は8000字程度。神様を殺したい夜にどうぞ。
ご試食品
* 私には神様に口を出す権利なんてない。話を中断されて「今通った女の子、可愛いね。どこの高校かなぁ」と言われても、「付き合いたい?」と言われてこくんと頷いてもふっと笑われて次の話題にされても。それは何も恋愛関係にないからだとか低俗で下らない理由じゃない。彼が神様のような人だから。彼が私の神様だから。 * 「いつかお兄さんが私を捨てても、私はずっとお兄さんが好き 「永遠はないよ」 「知ってるわ。知っていてもそう思ってしまうのが恋なんだと思うの」 「幼いね。それに馬鹿げてる」 「そうかもね。でも、お兄さんが私を馬鹿にしちゃったの。……ね」 「なに?」 「ずっと好きだったらどうしてくれる?」 「どうしようか」 「私が決めていい? いいわよね、だってお兄さん、年上の癖に自分で何かを決めるの苦手だものね……そうね、私のものよ、って言って」 「きみの、もの」 「そう、その響き、すごく好き。私がずっとお兄さんのことが好きだったら、お兄さんは私のものだって言ってね」 * 「これ、フリーリングなんだ」 「そう。お兄さんが好きな指に付けられるようにね」 実際には、フリーリングを買い求めたのは指輪の号数が分からなかったからで、これは言葉遊びだ。それでもお兄さんは辛そうな、苛立たしいような、そんな顔をしている。 子供じみた独占欲で小指に付ける。お兄さんの指先は、震えていた。 その震えが十二月の寒さのせいではないことは言葉を交わさなくても分かっていた。 「つぎに会うとき、付けてきて」 * 気が触れる、気が触れる、僕はこの子に気が触れる。
