〈小市民〉シリーズ合同誌『砂糖と謎解きの季節』
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米澤穂信〈小市民〉シリーズに捧げる評論・創作合同誌 シリーズすべての「小市民」の用例を調べ上げた力作評論から、仲丸十希子に思いを馳せる短歌集、『冬期』のその後を描いたパスティーシュ―― 評論に創作まで、一冊まるごと〈小市民〉! (※シリーズのネタバレが含まれます) 第一部◆次善の想像力(評論篇) 「〈小市民〉の語義と用法、その基礎的な検討」山田リョウ太郎 本稿では、シリーズ全作品に登場する〈小市民〉の用例を網羅的に蒐集した表を作成するとともに、各作品で特徴的な語義と用法を論じた。かかる基礎的な作業を通じて、〈小市民〉シリーズを語るための実証的基盤を提供する。 「関係は目的か、手段か」橙乃オレンジ 小市民シリーズにおける「スイーツ」。連作の中核にありながら、敢えて顧みられることのなかったモチーフを、『冬期限定ボンボンショコラ事件』を中心にいま一度整理、検討する試論。 「憧れのお姉さんと、彼女の迷路について」菅谷理瑚 シリーズを読み始めたとき、そのひとはうんと年上のお姉さんだった。彼女にとって復讐とはなんなのか。小佐内ゆきさんへの憧れを起点として、小説のテクストを読み解きながら、最後までブラックボックスとして書かれたひとりの人間の内面にせまる。 「ふたりで歩く」鷲羽巧 米澤作品に頻出する、歩行のモチーフ。それは〈小市民〉シリーズにおいても例外ではない。世界へと分け入り、切り結び、生きてゆくための方法としての「歩行」から、『冬期限定ボンボンショコラ事件』を読む。 「小鳩常悟朗はマルジナリアの夢を見ない」織戸久貴 《小市民》長編四部作において、謎はいかに生起し、語られ、季節をめぐってきたか。ポー、ドイル、テイ、アルフォンソ・リンギスのテクストを織り交ぜながら、やがて立ち上がってくる余白を捉える、四万字超のロングクリティーク。 第二部◆砂糖と謎解きの季節(創作篇) 「卵が割れた」入ヶ岳愁 高校二年も終わりの春休み、ひとり名古屋を訪れた小鳩君は、ばったり古城秋桜さんと鉢合わせる。一年ぶりに会った古城さんは息を切らし、目に涙を溜めて、小佐内さんを探していた。「ゆきちゃん先輩、あたしにがっかりしたと思います。嫌いになったと思います」でも、どうして? 「仲丸十希子イメージ歌集 お姫さまにはなれない放課後」ななめの 彼女といた秋。それから彼女と過ごさなかった冬。わたしたちは見えない足跡をたどりはじめる。それは架空の、三十首だけのショートソングス(短歌集)。“見上げなかったし見下ろさなかった火星/地球がすれちがった年” 「善い時がまた巡り来ますように」やもり 事故の記憶が次第に薄れゆく日々。晴れて退院した小鳩君は、卒業証書を受け取りにひとり船戸高校へと向かう。 「火星と月のちがいほど」無塔遼一 大学生になった小佐内ゆきが京都の街で遭遇したいくつかの偶然は、自身の在り様への問いかけとなって降りかかる。世界が荒野であるとき、彼女はいかにして迷路を作るのか。

